世界ドラコンランキング3位も参戦!
日本一の飛ばし屋を決めるドラコン日本選手権。その舞台の東名CCは、選手たちの間では“ドラコンの聖地”として定着している。昨年までは練習場の打席前にティグラウンドがあったが、今回は練習場奥に専用ティが設置された。“逆打ちティ”にすることでランディングエリアが打ち下ろしとなり、400ヤードを超える記録が期待できるように。
ルールを簡単に説明すると、公式競技球は、アメリカン倶楽部がドラコン用に開発した「Charger-X(チャージャーX)」。ヘッドスピードが軽々と60m/sを超えるモンスターたちのために、コンプレッション110と硬くしたボールだ。ティの長さは4インチ(101.6ミリ)以下。ティも、手作りのものや、紐やゴムなどを装着したものは使用不可と決められている。
競技は、グループごとに3人ずつの選手が同時にティグラウンドに立ち、2分45秒の持ち時間内に6球を打つ。左右幅40ヤードに収まったボールのうち、もっとも飛んだものをレーザー飛距離測定器で測定した認定距離がその選手の記録となり、上位数名が次のグループへと進んでいく。
今年の注目は、オープンディビジョン6連覇中の南出仁寛が記録をさらに伸ばすことができるか。そしてもうひとつは世界ドラコンランキング3位、モーリス・アレンの参戦だ。
オープンディビジョンは前日にステージ4まで終わっており、モーリスはステージ5のグループBで登場。まず目を引いたのは、その出で立ちだ。ピンクのシャツにブルーのパンツ、グローブも左がピンクで右はブルー。そしてカスタムペイントしたというシューズも、ピンクのベースにブルーのラインが描かれている。調子によって使い分けるという数本のドライバーの中にも、ピンクヘッドがあった。
「おばさん2人を乳がんで亡くしていて、ピンクを身につけるのはチャリティ活動の一環なんだ。ブルー? これはピンクにマッチするからだよ。意味はないさ(笑)」
フォームがまた個性的で、クラブヘッドを一度、右足の前を過ぎるあたりあたりまで引き、戻してからスウィングする。その理由を問うと、
「テークバックで右足に全体重を乗せるためなんだ」
173センチと小柄ながら(体重は105キロ)ヘッドスピード70m/s、自己最長488ヤード(!)飛ばすには、大きな体重移動が欠かせないのだ。
モーリスは401ヤードとこの日初の400ヤードオーバーを決め、1位通過でステージ6へ。そこでも2位の398ヤードを叩き出し、ステージ9へと危なげなく進んだ。
オープンディビジョンはステージ8で一旦終了し、13時過ぎからシニアディビジョンが始まった。こちらも前日にステージ4まで消化しており、セミファイナルからのスタートだ。
先ほどまでオープンディビジョンに出場していた山田勉が連戦で登場。2位でファイナル進出と、2005年オープンディビジョンチャンピオンの実力を見せつけるも、決勝では4位に終わる。
勝ったのは近藤鉄也。セミファイナル通過は最後の1枠の6位だったが、ファイナルで390ヤードかっ飛ばして頂をつかんだ。
「ヤベ! 6球目! 鳥肌!」
上のセリフは原文ママで、意訳すると「危なかった! ラストの6球目で390ヤードが出た! 優勝の奇跡に鳥肌が立った!」といったところか。2014年LDA世界ドラコン選手権日本大会でベスト8の実績がある近藤。今年になって自己ベストの400ヤードを記録した、伸び盛りの46歳だ。
本人に飛ばしのコツを聞いてみると、
「ゆっくり大きく上げて、ダウンではぶつけるように強くインパクトするんです。私は体が小さいので(175センチ・78キロ)、体重を使って打ちにいくようにしています。そのとき、頭の位置が突っ込まないようにするのが基本です」
14時からはウィメンズディビジョン。12名がセミファイナルに挑み、上位3名がファイナルへ。1位・齊藤かおり325ヤード、2位・杉山美帆320ヤード、3位・山添麗子305ヤードと、いずれも300ヤードオーバーの見事な記録を残した。
「320ヤードを目指していたのでうれしい」と話していた週刊ゴルフダイジェストの美女ゴルファーユニット「ゴルル」メンバーの杉山は、ファイナルでも309ヤードと健闘。だが、「若さと女子力でぶっ飛ばしたい」とジョークで語る百戦錬磨のベテラン、齊藤が318ヤードで上回った。
3年ぶり7度目の女王に返り咲いた齊藤。その3年前、世界大会に出て自分と競争相手との身長、体重、スピードの違いに驚いたという。
「それに日本でも、歳を重ねるごとにポテンシャルの高い人が出てきて……。ドラコンだけど、ミート率とスピードを高めていかないと、若い子に勝てないと思いました」
体が左右に動きすぎるクセを、体幹・コアを使った回転スウィングに修正。ニュースタイルでドラコン女王は復活を遂げた。
時刻は14時30分を過ぎ、スーパーシニアディビジョンのセミファイナルがスタート。なんと、三たび山田が現れたのだ。3位タイで進んだファイナルでも3位に入り、パワーのみならずタフネスぶりをも見せつけた。
ファイナルで370ヤードを記録した堀田晃宏は、昨年に続くスーパーシニア連覇。53歳でこれだけ飛ばせる秘密を聞いた。
「ミもフタもない言い方ですが、思い切り振る(笑)。あとは、右ひじを伸ばしてタメを早くほどくことですね。私はタマりすぎて右に行ったりするんですが、アマチュアにもタマりすぎの方が多いんです。釣りのキャストの要領で、トップから下ろしていくといいですよ」
また、ヘッドスピードを上げるには、全体的に軽めでヘッドバランスも軽いクラブを使うと、速く振れることも教えてくれた。
そしていよいよオープンディビジョンが再開。ステージ9には、チャンピオンズリーグ最終ポイントランキング1位の南出、2位の永原総太朗が、いわばシード選手的に初見参。だがファイナル進出を決めたのは三隅直人とモーリスで、勝ち上がりならなかった2人はステージ11に回る。
そのステージ11では、6名のうち上位2名がファイナルに進む。1位は412ヤードの永原、そして3位を1ヤード上回った南出が2位で通過し、7連覇に望みをつないだ。
ファイナルを前に、4名が意気込みを語る。
「ここに残れないと思っていた。やるしかない。思いっきり振ります」(南出)
「ワクワクします。相手のモーリス選手が世界3位なので、倒したら1位か2位になりますよね(笑)」(永原)
「世界の大会では、日本の素晴らしい選手と戦うことがないので楽しみにしている」(モーリス)
「今日この場所で、この4人に残れて、ドラコン選手としていちばんの喜びです」(三隅)
ファイナルはトーナメント制だ。抽選の結果、第1対戦は三隅と南出。”ドラコングレートハンター”の異名を持つ三隅が、”ティグラウンドのファンタジスタ””絶対王者”こと南出を破り、王者狩りを果たす。第2対戦は、モーリスがこの日最長不倒の414ヤード弾で永原を撃退。残るは三隅とモーリスの一騎打ちとなった。
これが最後の決勝戦。このバトルに関しては、同時に並んで打つのではなく、対戦する2人が1球ずつ、交互にティに立つ。ボールを打つ時間にも制限はない。
優先順番選択権を得たモーリスが2番目を選び、先攻は三隅。続いて後攻のモーリス、また三隅と順番に打っていく。そしてモーリスの6球目が終わり、勝負は計測に。三隅389ヤード、対するモーリスは……401ヤード! 世界ドラコンランキング3位の実力者が、ゴルフダイジェスト ジャパン ロングドライブ チャンピオンシップ 2018を制した。
オープンディビジョン、シニアディビジョン、ウィメンズディビジョンの優勝者は世界大会に派遣されるが、モーリスはすでに出場権を取得済み。三隅がオープンディビジョンの日本代表となった。
「去年、世界大会が終わってから『もう一度あの舞台に立ちたい』という思いだけで頑張ってきました。2位ですけど、胸を張って行ってきます」(三隅)
「世界大会で今年も来年も会えることを楽しみにしている」(モーリス)
ドラコンに命を燃やす熱いゴルファーたちの戦いが、今年も幕を閉じた。各ディビジョンを制した日本最強のドラコン選手たちが、モーリスをはじめ世界レベルのドラコン選手たちを相手にどう戦うのかが早くも楽しみでならない。
撮影/三木崇徳