スウィングによって合うシャフトは異なるというのはもはや常識。メーカーのいわゆる“純正シャフト”は、ヘッドの特性を考慮した上で、なるべく多くのゴルファーに合うように最適化されているが、さらに自分にピッタリとハマるものを求めるならば、カスタムシャフトが選択肢に入ってくる。
中でも人気で、これから発売される2019年モデルドライバーのカスタムシャフトとしても採用される機会が多いであろう最新4モデル、すなわちグラファイトデザイン「ツアーAD VR」、フジクラ「スピーダーエボリューションV 」、USTマミヤ「ジ・アッタス」、三菱ケミカル「ディアマナDF」を、ボールはタイトリスト「V1 X」、ヘッドはテーラーメイド「M3」に統一し、テストした。
シャフトがヘッドスピードを上げてくれるフジクラ「スピーダーエボリューションV」
まずは今モデルで5代目となるフジクラの「スピーダーエボリューションV(ファイブ)」。初代スピーダーエボリューション、通称“青エボ”の後継機とメーカー担当者が語る通り、シャフトの色合いも青系統に原点回帰。堀口の第一印象は「エボ4よりも動く」とのこと。詳しく解説してもらおう。
「切り返しでしなったものがインパクトにかけてしなり戻るスピード感が気持ちいいシャフトですね。力まなくてもラクにヘッドスピードを上げてくれるシャフトと言っていいでしょう」(堀口、以下同)
今回の5代目は、初代さながらの強烈な弾き感があるようだ。シャフトがよく動くため、ヘッドスピードが遅くてもしなりとしなり戻りが感じられるのも魅力。もちろん、プロが思い切り振ってもシャフトがしっかり反応してくれると堀口は言う。
「シャフトがヘッドを走らせて、球を上げてくれます」と堀口が言うとおり、今回試打した4種の中でも打ち出し角は12.3度と高め。注目すべきはロフト角10.5度のヘッドとの組み合わせ。打ち出し角が16.7度と増えたのにもかかわらずスピン量は増えていない。
「シャフトがボールを上げてくれるので、打ち出し角が低いゴルファーにはかなりオススメできます」(堀口)
低スピンで飛ばせる。グラファイトデザイン「ツアーAD VR」
続いてはグラファイトデザイン「ツアーAD VR」。ロゴの横にはツアーADお馴染みのストライプの装飾が施されており、青と白のコントラストも気持ち良い。
試打した堀口はツアーAD VRを「弾くというよりは粘るシャフト」だと評する。
「“エボV”とは対照的に、自分でヘッドスピードを上げられる人に向いているシャフトですね。振ったら振った分だけ飛ぶから、コントロール性が高いです」
このシャフトとマッチするのは「自分でヘッドスピードを上げられる人で、とくにスピン量が多い人」だと堀口は言う。ヘッドスピードの速いゴルファーにとって、叩きに行った時にスピンが増えすぎないのは、飛距離を出す上で大きなメリットになるはずだ。
中弾道・低スピンシャフトのツアーAD VR。打ち出しが高い程スピンヘッドと組み合わせることで、高打ち出し・低スピンの弾道で最大の飛距離を得られるというわけだ。
先端しっかりで左に行かないのが魅力。三菱ケミカル「ディアマナDF」
三菱ケミカルのディアマナシリーズ最新作となる「ディアマナDF」。
「スピン量が少なくツアーAD VRに近いフィーリング」と堀口。走り系か粘り系かで言えば粘り系に近いフィーリングだが、クセがなく素直なシャフトだと堀口はこのシャフトを評価する。
「クセがなく素直なシャフトですが、シャフトの先端側がしっかりしているため、球が左に行く心配がありません。ツアーAD VR同様に中弾道・低スピンのボールが打ちやすいシャフトで、どちらかといえばパワーヒッター向けでしょう」(堀口)
ヘッドスピードは速いがスウィングが今ひとつ安定しない人にとって、タイミングを揃えてくれて弾道も安定するディアマナDFは強い武器になると言う。
シリーズ10代目の集大成。全体しなりが心地いい、USTマミヤ「ジ・アッタス」
最後はUSTマミヤの「ジ・アッタス」。アッタスシリーズ10代目となる今作、「ジ(The)」を冠するネーミングは「これぞアッタスだ!」と言わんばかり。シリーズの集大成とも言える出来に期待が膨らむ。堀口が試打した感想はこうだ。
「軽く振りぬけるからやさしく感じるし、振らなくていいから楽に打てます。叩くというよりはスウィングする感覚ですね」
「今回の4モデルの中で1番素直で曲がりにくい」というジ・アッタスだが、さらに注目なのが、しなり方。手元が固めで先端が走るタイプや、逆に先端がしっかりしていて手元がしなるタイプなど、しなりの系統も様々あるが、ジ・アッタスは「シャフトのどこがしなるという感覚ではなく全体がしなる。それでいてしなり戻りも速すぎない」と堀口は語る。
球が上がりやすいので、ボールをつかまえて高く上げたいゴルファー、今使っているヘッドがイマイチ球が上がりにくいと感じているゴルファーなどにマッチしそう。
2018年も後半戦、秋のベストシーズンに向けてシャフトを見直してみても、面白い。
撮影協力/PGST