プロテストのレベルは毎年上がっている
今年の2月に2019年度からのLPGAプロテストとQTの制度変更が発表されました。発表になった変更点は以下の通りです。
【プロテスト】
受験資格年齢: 18歳以上→17歳以上 ※2019年4月1日時点で満17歳以上の女子
最終プロテスト実施日程:7月→11月
※第1次予選:7月中旬~下旬 第2次予選:8月中旬~9月上旬 最終プロテスト:11月上旬
【クォリファイングトーナメント】
出場資格年齢:18歳以上→17歳以上 ※2019年4月1日時点で満17歳以上の女子
ステージ数:4ステージ→2ステージ
出場資格:LPGA会員(2019年のみ一部非会員も出場可)
ここ数年、プロテストのレベルが急激に上がっています。
それは黄金世代(※編注:畑岡奈紗、勝みなみ、新垣比菜、小祝さくら、三浦桃香らがいる98年度生まれ世代)に代表される様に「宮里藍キッズ」と言える20歳前後の優秀な選手達が大挙してプロテストに挑戦している状況が続いているからです。
実際、先日行われたプロテスト2次ではツアー参戦している三浦桃香選手や全米女子オープンに参戦した高山佳小里選手ら多くの実績を持った選手ですら最終テストに進出できませんでした。
ここ数年のプロテスト規定合格人数である20位タイのスコアは、2015年1オーバー(こだまゴルフクラブ/6385ヤード)、2016年イーブン(周南カントリー倶楽部/6599ヤード)、2017年2アンダー(小杉カントリークラブ/6397ヤード)です。
見てわかるように、年々合格のスコアが上がってきています。もちろん、コースや天候によっても合格スコアは大きく変動する事は言うまでもありません。
しかも今年のプロテストは、上述した来年度からのLPGAプロテストとQTの制度変更を受けて、更に激戦になることが予想されます。
それは2020年からQTの受験資格がLPGA会員である事が明記されたため、現在、単年度登録でトーナメントに出場している選手も、今後の事を考え受験を選択するケースが増えるためです。
更に来年のプロテストは受験資格年齢が18歳から17歳に引き下げられる事もあり、2019年に高校既卒者と高校3年生が、同時にプロテスト受験ができる事になります。その為、史上最難度レベルのプロテストが予想されるのです。
4日間アンダーパーでも合格できないほどハイレベルなテストは妥当か
日本女子ゴルフ界のレベルアップは素晴らしい事ですが、4日間をアンダーパーでラウンドしても合格できないプロテストには疑問を感じざるをえません。
そもそもプロテストはプロとしての技術を審査するものです。受験者数が現在よりも少なく、レベルが今ほど高くなかった時代に作られた20位タイという合格基準は、現在の受験者数やレベルに対して合っているとは言えない状況になっています。
また、プロテスト合格人数を変更しないままQTとの一本化を進めると、別ルートからのシステムとなっていた、プロテストに落ちてもQTを突破してツアーやステップアップツアーに参戦し、プロの世界に挑戦するシステムが事実上なくなります。
QTからのルートがあれば、たとえプロテストをまだ通過していなくても、ツアーやステップアップなど恵まれた環境での試合経験積を積む事が可能となり、そのこと自体が実力をつける良い機会になっていました。
私の指導している成田美寿々プロも高校卒業後、最初のプロテストは失敗してしまいましたが、QTでツアー出場権を獲得して試合の中で実力を身につけた結果、ツアーで優勝する事ができました。どんなに力のある選手でも、決められた日程の一発勝負で力を発揮しなければいけないと言うのは厳しいものです。
もちろん、今回のLPGAプロテスト・LPGAクォリファイングトーナメント制度変更は悪いことばかりではありません。「単年度登録」といった分かりにくさを是正したり、高校3年生にとっては「就活」としてプロテストに臨めたり、プロテストとQTの一本化によって、受験コストが軽減できるなど多くのメリットも存在します。
しかし、今回の制度変更の最大の懸念は新陳代謝の悪化です。LPGA会員でなければQTに挑戦できなくなれば、間違いなく実力を持った若手ゴルファーの戦う場が失われて行きます。魅力的な若手プロの活躍によって盛り上がっている女子ツアーにとっては首を絞める結果になってしまうのです。
これを回避する為には、そろそろプロテスト合格人数の改訂を抱き合わせで検討する必要があるのではないかと思います。未来ある若手プロに活躍のチャンスの場が与えられ、トーナメントや、ひいてはゴルフ界が盛り上がる事が多くの人の願いではないでしょうか。