曲げたくなければフェースを返さなきゃいい
今季、関西オープンでツアー3勝目を挙げた時松。24歳には見えない(?)その風貌と、右手を下から当てる「テンフィンガーグリップ」でフェースローテーション(フェースの開閉)を抑えた変則スウィングをしていることで注目を集めています。
そんな時松をジュニアの頃から指導していたのが篠塚武久さん。私は今まで世界中のスウィング理論を学んできましたが、テンフィンガーグリップの理論は少なく、篠塚さんの提唱する「桜美式」という独特の理論に興味があり、1日入門をしてきました。
篠塚さんが目指すのは、飛んで曲がらないスウィング(これは誰でも手に入れたい!)。そのためにフェースも腕もねじらない(返さない)ように動かすということを重要視しています。ボールが曲がるのは、フェースの開閉が過度に行われているためで、だったら開閉をしなければいいじゃないかという分かりやすいものでした。
「桜美式」の理想となる動きを理解するためには、ショットよりパッティングのほうがイメージしやすいので、パッティングを例に説明したいと思います。パッティングのストロークで、フェース面をできるだけ開閉させないためには、フェース面を真っ直ぐ動かし、手元も直線的に動かすように打ちます。
右手のひらを真っ直ぐ目標に押し出していくイメージで、若い人にはなじみが薄いかもしれませんが、往年の杉原輝雄のストロークのように左ひじが曲がった形になります。フェースが返らないことに加え、動きがシンプルなため再現性の高い安定したストロークになると言えます。
世界に目を向けると、全英オープンを制したフランシスコ・モリナリを指導するデーブ・ストックトンも手元を真っ直ぐ動かす「直線ストローク」の始動をしています。
トーマスのようにパターを強振する感覚で振る
では、いよいよスウィングの話に移りたいと思います。と言っても複雑なことは何もなく、先ほどストロークしたパッティングの動きを変えずに「速く思いっきり振る」だけ。
フェース面を開閉させずに速く振るためには、手だけではなく、胸郭などの胴体部分を高速で動かす必要があります。しかしやってみると分かりますが、上半身の胴体部分を速く動かそうとしただけでは、そこまで速く振れずスウィング幅を大きくするにも限界があります。
ではどうするか。ここからは私の見解なのですが、ジャスティン・トーマスのように地面反力の動きを使うと、直線的な手元の動きをキープしたままスムーズに動かせるのではないかと思いました。
テークバックでは右腰を斜め後ろに引き上げ、右ひざをはじめとした右サイドを伸ばします。そうすると右肩が上がって、テークバックを大きくすることができます。ですが肩の上下動でクラブを動かしているため、フェース面の角度が大きく変わることはありません。
そしてダウンスウィングでは、左足を強く踏み込み左サイドを伸ばします。すると下がっていた左肩が上がって右肩と高速に入れ替わります。
このようにパッティングの「直線ストローク」の形を基本にフェース面の開閉を抑えられれば、曲がり幅の少ない安定した球筋になります。しかしそれだけでは振り幅が小さくヘッドスピードも出ません。そこでテークバックで右サイドを伸ばし、フォローでは左サイドを伸ばすことで振り幅が大きくなり、「直線ストローク」を高速で行うことができるのです。
スピースの「左ひじの引け」には理由があった
この動きはジョーダン・スピースにもみられます。スピースはフォローで左ひじが「抜けた」ように引ける動きが特徴的。これは桜美式のように「直線ストローク」を応用して、フェース面を極力変えないようにしている動きといえます。その形を維持しつつ胴体部分を高速で回すために、スピースもトーマスと同じようにダウンスウィングで左足を踏み込んで、左サイドを伸ばして胸郭を高速に回転させています。
一見するとフェースローテーションが少なく変則に見える時松の動きは、世界のトップ選手も取り入れる最新のスウィングだったのです。
この動きはストレートボールを打ちたいアマチュアにもオススメの動きです。まず、練習場でパターを手に「直線ストローク」のパッティングストロークで、ボールを思い切り遠くに飛ばすよう打ってみましょう。形をキープしたまま遠くに飛ばすために、地面を踏み込む動きが自然と身につくはずです。
独特のグリップや篠原さんの理論の詳細は7月24日発売の「週刊ゴルフダイジェスト」にて対談を行っているので、気になった方はそちらもチェックをしてみてください。