ゴルファーたるものベストスコアを更新できたらとても嬉しいもの。しかし、ショットやマネジメントに集中しすぎてゴルフ場の美しさを忘れてはいませんか?ゴルフマナー研究家・鈴木康之の著書「ゴルファーのスピリット」からスコットランドのゴルフ場でのエピソードをご紹介。

スコアをつけない日があっていい

スコットランドへ行ってみたいという人がいると一生懸命になります。リンクス巡りを始めてまだ十年になっていませんが、一見さんの案内ならできます。

第一印象、つまり初日がだいじです。どこにするか。何案かありまして、ある時はノースベリックGCにしました。マリン・ホテルで最初の朝を迎え、窓の下のリンクスが闇の中からその姿態を現わす夜明けのショーで感動させ、朝食前にコース内を散歩させれば、誰もが勇んで出走前の馬状態になります。

画像: スコアを書き込まず、ラウンドしてみるのもまたゴルフの楽しみの一つである

スコアを書き込まず、ラウンドしてみるのもまたゴルフの楽しみの一つである

その時もそこまでは思う壺でした。ゲートを開けられたその時のお馬さんたち、一番ホールから突っ走りました。それはやむを得ませんが、グリーンを終えるなりその第一声がスコアカードを広げて「ヤスさん、いまいくつ」これが二番、三番と繰り返されるのには弱りました。

スコアを数えたり、書き込んだりする暇も惜しんでここのゴルフを味わいなさい。隆起の妖しさ、バンカーの深さの意味、グリーンとのつながりの絶妙、ほら、隣のホールを行く担ぎのふたりのあの風情、ほら、コース沿いの町並みの数世紀前からの建築。ひとつひとつを目に焼き付けなさいよ。

一見には攻め方なぞ分かるはずのないのがリンクスです。スコアカードの7も8も土産にはなりません。スコアカードに書き込んでほしいのは「百八十ヤードをなんと6番アイアンで大オーバー」とか「2打目石垣直撃、なんだこの石垣は」とか、あるいはメモリアル・ベンチ刻印されている一行のメッセージなど。これらのほうがずっといい土産になります。

リンクスに限らず、ゴルフコースはメンバーたちが飽きずに遊ぶところ。初回ビジターが持ち帰るのは、スコアどっさりではなく、思い出どっさりであってほしいものです。

セントアンドリュースのコース管理会社に聞いた、日本観光客のプレーで一番困ること。それは「スリーパット、フォーパットを、交代々々いちいちマークして、しかも四人目のパッティングが終わるまでやって、そのうえグリーン上でみんなうつむき、スコアカードを広げてなかなか下りないこと」でした。

日常ホールバイホールのマッチプレーでさっさと回っているあちらの方々の目には、別なゴルフに見えるのでしょう。後続の組を順々に渋滞させる、後ろに目のないゴルフが信じられなくて、首をすくめ口をへの字にするのです。

さて、日本のあるコースの朝、マスター室前でメンバーらしき人が本日筆下ろしらしき連れの人の面倒をみてやっていました。

「はい、これがボールマーク、これがグリーンフォーク」

「なんですか、これ」

「あとで練習グリーンへ行って使い方を教えてあげる。これがスコアカード、鉛筆をこうはさむの」

「はあ」

「でもね、きょうはスコアなんかつけなくていいからさ。覚えることがいっぱいあるからスコアカードにどんどんメモしなさい」

「ゴルファーのスピリット」(ゴルフダイジェスト新書)より

撮影/姉崎正

キャロウェイ

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