2005年のレッスン・オブ・ザ・イヤーを受賞した増田哲仁プロは、「アドレスで不安定な状態を作れば作るほど体が動きやすくなる」という。著書「ネジらない! から遠くへ飛ぶ、ピンに寄る。」から引っかけを防ぐ方法を紐解こう。

つま先ウェートの不安定なアドレスがいい

――アドレスはつま先体重がいいとのことですが。そうすると、グラグラしてしまいます。

それは、指の使い方に問題があるのかもしれませんね。昔から、アドレスでは足の指で地面をがっちりつかむようにしろといいますが、それだと指の付け根部分に体重を乗せることができないんです。さらに指を立てて地面をつかむように立つのは、地面に根を生やして下半身を固定するようなもの。動き出しにくくなってしまうのでNGです。

足の指は大地をつかむように曲げるのではなく、むしろ足裏を反るようにして、逆に指先を浮かせたほうがいいんですよ。そのほうが、つま先寄りに重心を乗せやすいはずです。

画像: つま先重心でスウィングを安定させよう

つま先重心でスウィングを安定させよう

――バランスがとりにくくて、とても不安定な感じがしてしまうんですが。

その不安定がいいんですよ。下半身が安定するようなどっしりとしたアドレスでは体を一体化してスムーズに動かすことはできません。不安定にすればするほど、下半身が固定されることなく体全体をスムーズに動かすことができ、スウィングが安定してくるんですよ。

ロッキングチェアというイスがありますが、ロッキングチェアは乗るとグラグラして、とても不安定に感じます。しかし、前後に揺れることでしっかりバランスがとれているんです。これはスウィングも同じで、アドレスで不安定な状態を作れば作るほど体が動きやすくなり、腕や手を使わないスウィングができるようになるのです。

――体が動きやすいほうがスウィングが安定するんですね。

そうです。さらに重心を高く保って体を動きやすくするには、両ひざにも注意が必要です。アドレス時に両ひざを曲げすぎると、重心が下がりやすい。ひざを曲げすぎることで、腰の位置が低くなります。これも引っかけの原因となります。

画像: ひざを深く曲げ腰の位置の低いアドレス(左)より、重心の高いアドレス(右)のほうが動きやすい

ひざを深く曲げ腰の位置の低いアドレス(左)より、重心の高いアドレス(右)のほうが動きやすい

――両ひざは軽く曲げる程度でいいんですか。

アドレスをするときは、まずスタンスを自分の歩幅に広げ、ひざを伸ばしたまま足首から前のめりに前傾していきます。そのままでは我慢できなくて、1歩前に踏み出そうになるポジションにきたら、両ひざをほんの少しだけ曲げるんです。このとき両足のかかとが地面に着くか、着かないかという状態になっていれば、重心がつま先寄りにあるアドレスになっているはずです。

――ついつい、腰を落として、かかと体重気味になってしまいます。

そういう人にお勧めしたい方法があります。先ほど説明した手順でアドレスした後、スウィング始動の直前に両かかとをちょっと浮かせてつま先立ちし、伸び上がるような動きを入れるんです。ソールしたクラブに全体重をかけることで、かかとを浮かせてもいいでしょう。これは私の教える女子プロや研修生にもよくやらせる方法なんですが、かかとを浮かせることによって、つま先寄りに体重が乗ると同時に、腰が落ちて重心が低くなるのを防いでくれます。その分だけ手打ちになりにくくなりますから、これだけで、左引っかけは減るはずです。

画像: わずかにかかとを浮かせるくらいのバランスで立とう

わずかにかかとを浮かせるくらいのバランスで立とう

――ずいぶん、前のめりなアドレスになりますが、たしかに楽にスウィングできます。

とにかく不安定であることに不安にならないことです。慣れてくれば、それほど不安定に感じなくなります。また、壁から30センチほど離れて立って、胸を前に突き出して、胸だけを壁につけることでアドレスの体重のかけ方を体感する方法もあります。こうすると、かかとが浮いて、自然につま先寄り体重になるはずです。これがアドレス時のつま先体重の感覚です。練習の段階では、この感覚を生かしてスウィングしてみてください。実際にかかとを浮かせたままスウィングしてもまったく問題ありません。腰に体重が乗って、スムーズに動き出せるだけでなく、体の入れ替えが鋭くなれば、強い球が打てるようになるはずです。

「ネジらない!から遠くへ飛ぶ、ピンに寄る」(ゴルフダイジェスト新書)より

写真/岩村一男

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