ツアー会場で“売り切れ”発生!? テーラーメイド「ギャッパー」
まず打ったのは、テーラーメイド「GAPR(ギャッパー)」。全英オープンの練習日にはタイガー・ウッズや松山英樹を筆頭に多くのプロたちが試打した結果、調整機能なしのモデルがツアーで“売り切れ”になったことからも、注目度の高さがうかがえる。
フェアウェイウッドとロングアイアンの“ギャップを埋める”というコンセプトで作られたアイアン型ユーティリティで、ロー、ミッド、ハイの三種がラインナップされているが、その性能は如何なものか。
「GAPR ロー」の3番を試打した堀口は「3番とは思えないくらい飛びます。フェアウェイウッド並ですね」とその飛び性能に驚きを見せる。見た目にはアイアン型ユーティリティで飛びそうには見えないが、たしかに飛んでいる。
「非常にスピンが少なく、ティショット向きです。ただ、使いこなすにはかなりのヘッドスピードが必要です。アイアンにダイナミックゴールドなどの重量級スチールシャフトを差すくらいの人が真価を発揮できるクラブですね」(堀口)
「ミッド」、「ハイ」も「ロー」と同じくユーティリティとしては飛ぶタイプ。ドライバーのヘッドスピードが50m/s前後あるとはいえ、堀口は「ミッド」の3番で230~250ヤードほど飛ばしていたから凄い。
「『ロー』よりも芯が広く打ちやすいため、とくに『ハイ』はヘッドスピードやミート率があまり出ないアマチュアでも使いこなせます」と中村。
ハイでも形状はかなり小さめ。昔ながらのアイアン型ユーティリティの流れだ。
「いずれもヘッド内部は中空になっていますが、内部に充填剤を入れることで弾き感はちゃんとあります。ハイに関しては、高く入ってきても芯を食えそうな感じです。今回の3モデルはアイアン型ユーティリティの新しい形を示してくれました」(中村)
非常にコンパクトな形状のこのクラブ、スピン量の少なさもあって、「ロー」はかなりのヘッドスピードとミート率を求められる。スピン量が少ないということはボールは上がりにくいということもであり、とくに「ロー」「ミッド」はティショット専用と考えたい。
「狭くて距離のあるパー3、距離の短いパー4などで、上級者が低いボールでラインを出したいときに強い味方になってくれそうなクラブです。ある程度割り切って、ティショット専用として考えるといいのではないでしょうか。一方、『ハイ』であれば、もう少し幅広い層のゴルファーが使えると思います」(中村)
デザイン的には非常にシャープでカッコいいこのGAPR。秋にかけて、バッグに入れるゴルファーが多そうだ。
ブレードだけど、飛び系アイアン。PING「i500」
続いては、PING「i500」。見た目は、スッキリとコンパクトなマッスルバックの形状だが、ヘッド内部は中空。見た目に反した飛び系アイアンとなっている。PGAツアーでは飛び系のアイアンをユーティリティ的に使う選手が多くいるが、このi500はトニー・フィナウが3番をバッグに入れている。
アイアン形状なので当たり前だが、見た目にはGAPRよりもさらにシャープ。堀口が3番アイアンを打ってみると、240ヤードという数字が出た。
「見え方のギャップに惑わされますが、昔のブレードと比べて全然難しくないです。弾き感も強いですし、打感も気持ち良い。クセがないのでアイアンの流れにそのまま組み込めそうですね」(堀口)
i500の標準シャフトのひとつ、「N.S.PRO ZELOS 7」にも注目だと中村。
「カーボンではなく軽いスチールシャフトを入れることによって他のアイアンとの流れがより良くなります。ユーティリティでなくアイアンの形状が好きな人は違和感なく使えるでしょう。GAPR同様長めのパー3や短めのパー4でのティショットで活躍しそうですが、こちらは上がりやすいので、パー5のセカンドでも活躍しそうです」(中村)
GAPR、i500ともに、過去に発売された同系統のクラブと比較してミスヒットに強くなっていると言う中村は、こういったクラブがPGA選手の注目を集めている理由をこう分析する。
「ユーティリティ然としたクラブだと高さが出過ぎてしまいますが、アイアンやアイアン型ユーティリティは高さが出ないぶん、左右の安定性があります。両側にバンカーや森があるシチュエーションで、安全に打ちながら攻められるという強みがありますね」(中村)
上がりやすさよりも、ラインの出しやすさ。方向性の良さを重視する。それが1打を争う選手たちに“刺さった”ようだ。
全英王者も使用する、技巧者好みのウェッジ。テーラーメイド「ハイトウ」
次はテーラーメイド「HI-TOE(ハイトウ)」ウェッジ。世界ランク1位のダスティン・ジョンソンにロリー・マキロイなどが愛用し、全英オープンで優勝したフランチェスコ・モリナリも、クラブ契約フリーながら60度のハイトウをバッグに入れていた。
「ネックがギュッと絞られていてトウに向かって広がっている形状で、ネックが長く非常に高重心。そのため、フェースの上めに当たっても飛ぶし、スピンもかかるんです。グリーン周りのラフに特化した性能が、PGAツアー選手の気にいるポイントなのではないでしょうか。厳しいピンを狙って、それを外したときのお助け性能を感じます」(中村)
たしかにダスティン・ジョンソンは64度を一本だけ入れている。そしてもうひとつ目を引くのが、フェースのほぼ全面に広がるスコアライン。どこに当たってもスピンがかかってくれそうな見た目通り、ヘッドスピードがなくてもフェースに食いつく感じを味わえる。
56・58・64度がラインナップされていて、特に64度ともなるとフィル・ミケルソンが打つようなロブショットも実現できそうなくらいボールを上げる性能が高い。
「グリーン周りのラフからのミスを減らしたい人は、お助けクラブ的に1本試しにバッグに入れてみるのを勧めます。それくらい、グリーン周りに特化した性能ですね」(中村)
デイと日本で勝ったスーパーアマ・ギルマンが愛用する「TPTシャフト」
最後はとっておき、スイス発カーボンシャフト「TPT」だ。実はこのシャフト、PGAツアーではジェイソン・デイが使って今シーズン2勝を挙げ、日本女子ツアー初出場の「センチュリー21レディス」でいきなり優勝し、余勢を駆って全米女子アマをもつい先日に制した20歳のスーパーアマチュア、クリスティン・ギルマンも使用しているシャフトだ。
ギルマンによれば「ティショットの安定感が抜群になった。コレに変えてからOBを打ったことがない」とのこと。
TPTは元々カーボンを用いた宇宙工学技術に長けた企業。その技術を活かして機械でカーボンシートを巻き、かつ編み込んでいる。先端部分の巻き数が通常であれば20程度のところ、TPTは60と圧倒的に多く、そのため安定感が高いのだとか。
通常のカーボンシートを巻いていく製造法だと、巻き始めと巻き終わりが存在するため完全な円筒状にはならず、シャフトの向きによって硬さに違いが出てしまう「スパイン」という問題があるが、TPTにはそれがない。また、フレックスやキックポイントを自由に設計できるのも大きな魅力だ。
「打ってみると、しなり戻りがすごく感じやすいですね。あとスパインがないからシャフトの向きを気にする必要がないのも良い。『似てるシャフトを探すのは難しい』感じがします」(堀口)
「めちゃくちゃ素直ですね、自分の振った通りに球が出ます。余計な動きがないから球のよじれが起きにくい。ある程度張りがあってトルクが少ないのかな」(中村)
日本での知名度はまだ低いが、今後注目されることになるかもしれない。
PGAツアーの選手というと雲の上の存在のように聞こえてしまうが、だからといって彼らの使うギアはすべてプロ向けでアマチュアには到底使いこなせない、なんてことはない。実際、特徴を見極め、スペックをよく選べば、今回紹介したギアは幅広いゴルファーが使える性能を持っている。
世界のトップが使うギア、一度試してみてはいかがか。
協力/PGST