同じ距離を打つならば、より短い番手で打ちたい。そう思うゴルファーは少なくない。それはなにも同伴者に対する見栄だけでなく、短い番手で打ったほうが確率が高いという理由による。より短い番手で、より大きな飛距離を出せるアイアンには確実なニーズがあることは、UD+2のここまでの大ヒットですでに証明済だ。
従来、飛び系アイアンとはすなわちストロングロフト(ロフトの立った)アイアンのことだと言われてきた。たとえばUD+2の7番のロフトは26度で、これは一昔前の基準なら5番アイアンのロフトだ。
だから7番で5番の距離を出すのが目的ならば、5番アイアンのソールに7と刻印すれば済む。ぶっ飛び系アイアンは、ときにそのように揶揄される。しかし、ゴルファーとは面白いもので、それはたしかに飛ぶ7番アイアンではあるはずだが、おそらく「こんな難しい7番アイアン打てるか!」と受け入れられないことが予想される。ポイントはそこではないのだ。
「7番で5番の距離を出し、なおかつ打ちやすさは7番と同程度」であること。これが現代のぶっ飛び系アイアンに求められる機能だ。なおかつ、ユーティリティのようなワイドソールではなく、あくまでアイアンの顔をしていることも重要だ。見た目は7番、長さは(やや長い)7番、飛び(ロフト)は5番、打ちやすさと球の高さは7番。そのようなアイアンということだ。
今回の発表会では、アマチュアゴルファーが7番アイアンを打って200ヤードを超える飛距離が出たことが紹介されていた。7番で200ヤードとは夢のような数字だが、感心するべきは7番アイアンで200ヤードを打てることではなく、ロフト26度のアイアンで200ヤードを打てることだろう。200ヤードは一般的にロフト20度前後のクラブでカバーする範囲であるはずだからだ。7番で200ヤードではなく、26度で200ヤードが「驚くところ」なのだ。
つまり、+2番手を謳い文句にしたUD+2の飛びは、結果的に番手の重要度を下げたとも言える。同じ番手で比較するのではなく、同じロフトで比較した場合に、より上がりやすく、より打ちやすく、より見た目の良いクラブが選ばれる時代。それがUD+2のヒットが到来させた新しい時代だ。
もはや同じ7番でもモデルによってロフト角が大きく異なることは常識と言っていいが、どれくらいその数字が異なるのかを、ヤマハのラインアップで比較してみよう。以下のような感じだ。
26度 インプレス UD+2
29度 インプレスUD+2レディース
30度 RMX218
31度 RMX118
35度 RMX018ツアーモデル
マッスルバック形状のツアーモデルと比べれば、UD+2は9度ロフトが立っており、これは2番手以上の差となる。一方、面白いのは今回同時に発表されたUD+2の女性向けモデルは7番で29度で、むしろ寝ている。このことからも、しっかりとボールが上がらなければ、ロフトが立っていても飛ばしにはつながらないことがわかる。
同時に、同じ7番でこれだけロフトが異なっている以上、たとえばUD+2とRMX018ツアーモデルの飛び比べには意味がないのは自明のことだろう。
なので、もしアイアンに飛距離を求めるのであれば、ブリヂストンのツアーB JGR HF1や、タイトリストのVG3タイプD、プロギアのエッグPC、あるいはキャロウェイのローグスターと言った、7番のロフト角が25〜27度のモデルを、構えやすさ、上がりやすさ、ミスヒットへの強さなどの観点から試打して比較するのが正解になってくるだろう。
あくまでアイアンに飛距離を求めず、従来通りの番手表記のものが好みなら、ロフト35度前後のものを(数は少なくなっているが)探して打ち比べればいい。ちなみに、国民的モデルとも言えるゼクシオの最新モデル「ゼクシオ テン」の7番アイアンのロフトは29度だ。
「(UD+2アイアンは)飛ぶだけじゃなく、高さが出ることがよかった」とはトークショーで壇上に上がったクラフトマンの鹿又芳典の弁。
ロフトが立てば立つほどボール初速は上がりやすく、スピン量は減りやすくなるが、打ち出し角度は低くなる。ならば、テクノロジーによって打ち出し角を補うことができれば、それは短いのに飛ばせるアイアンということになる。そう、ポイントは上がりやすさだ。番手表記を無視して言えば、ぶっ飛び系アイアンとは「上がりやすいアイアン」なのだ。
アイアンに訪れている大きな変化。この変化を受け入れるかどうかは人それぞれ。読者のみなさんは、ぶっ飛び系アイアン、使いますか? 使いませんか?