メーカー横並びの試打企画。結果を鵜呑みにできない難しさ
ズラリと並ぶ最新ドライバー。すでに市場で大人気のモデルもあれば、まだ発売されていない話題のモデルもある。それを一堂に会し試打できるなんて、幸せ者である。
こうしてドライバーばかりを並べて打ち比べをする時、気になるのはやはり飛距離結果だろうか? おそらく、そうだと思うので早々に示しておく。
話題のタイトリスト TSドライバーは、やっぱり飛ぶのか! と思った方も多いはずだ。確かに今回のTSは飛ぶ、というか打っていてボールスピードの速さを最初から実感できるモデルだった。それは確かである。
一番飛んだモデルがわかれば、次に気になるのは一番飛ばなかったモデルだろうか。それもゴルファーの習性、人の興味に戸を立てることはできない。今回は、キャロウェイのローグスターが一番飛んでいなかった、という結果となった。
試打者としては、これで「なんだローグは飛ばないのか……」と、軽々に判断されないことを願うばかりである。なぜなら、今回試打したローグスターは、シャフトが断トツで軟らかく、個人的にはまったくタイミングが取れないスペックだったからだ。
それがフェース下ヒットにつながり、飛距離を落とすバックスピンの増大につながってしまったのだと考えている。テーラーメイドのM4も同じく、シャフトが軟らかく個人的にはタイミングが合わせにくかった。
同じロフト帯、シャフト硬度で試打クラブを用意したところで、同じようにボールが上がったり、同じように気持ち良く振れるものではない。高く上がる9.5度もあれば、低くしか打てない10.5度もある。同じ硬度Sでもレディス? と感じるものから、カチカチに感じるものもあるのだ。
個人的な感想をいえば、スペック表示を拠り所に各社のクラブを横並び試打したところで本当のところはわからない。結局は試打者にとって最も振りやすいモデルが、安定した好結果を生み出すだけだからである。
横並び比較ではなく、同一モデル内の縦並び比較をしたい。
ご存知のとおり、ゴルフクラブ業界は長さの計測方法すら統一されていない、不可思議な世界である。何をもって硬度Sとするのか、そうしたことも決められてはいない。ロフト表記でさえも、その表示を鵜呑みすることはできない。モデルが違えば、同じロフト表示でも上がったり、上がらなかったりするし、ボールの上がりやすさはロフトだけで決まるものではないからだ。
私はゴルフクラブに表示されている数字やアルファベットは、そのモデル内でのみ通用する、角度や硬さの段階表示だと思っている。
たとえば、タイトリストTS3ドライバーの9.5度と10.5度なら、9.5度のほうが低くなるだろうし、専用シャフトのSとRなら、Sのほうが硬いと信じられる。しかし、モデルが違えば、その数字を比較しても意味はない。今回打ったTS3のツアーADがSシャフトだとすれば、ローグスター専用のSは、R程度の硬さに感じるからだ。
やっていないので絶対とはいえないが、今回一番飛距離が出なかったローグスターで、一番飛んだTS3なみに飛ばすことは、スペック次第では十分可能だと思う。スペック次第でローグスターは飛ばないモデルにもなるし、すごく飛ぶモデルにもできる。私の場合はロフトを9.5度にして、もっと硬いシャフトにすれば、グンっと飛距離が伸びるはずなのだ。
久々に最新ドライバーを横並びで試打して思ったことは、ゴルフクラブにまつわる、わかりやすいようでいてわかりにくい数字やアルファベットのおかしさ。そして、飛距離などのショットデータを横並び表記することの危険性だ。確実に誤解を招く、真っ当とはいえない数字を並べることになるからだ。
個人的には、ゴルフクラブ選択の楽しさは、飛んでいくボールを直接見ることだと思う。感触や音も重要。実際に打ち「これいいな」と感じたモデルに目星をつけ、比較はそのモデル内でじっくりと。そうであればゴルフクラブに表記された数字やアルファベットも信用できる。メーカー横並び比較ではなく、モデル内での縦並び比較を、ぜひおすすめしたい。