大山志保は平常心を称えたが、実は……
「もちろん、ショットの精度が高いのはあります。曲がらないし、グリーン周りも上手いし、パットも入る。さすがだなという感じです。でも、彼女の本当の凄さは、技術以上に気持ちの部分だと思います。今日みたいに雨が降っていて、コンディションが悪くても、晴れているときと、まるでプレーのリズムが変わりません。とにかく落ち着いているんです。
ジエが14番で、ティショットをOBしたんです。私だったらあまり平常心ではいられないと思うんです。でもジエは違う。まるでOBがなかったかのように、いつもどおり歩いていく。このブレない心が、強さなんだと感じましたね」(大山)
しかし、実際は少し違ったようだ。シン・ジエのキャディを務めている斎藤さんの見解。
「あれは“落ちついている風”です(笑)。今日はスタート前から“伸ばしたい! 伸ばしたい!”と鼻息が荒かったんです。だから『練習ラウンド通りやろうよ』と言い聞かせていました。OBを打ったときも、『大丈夫、ダボを狙っていこう』と、ジエが落ち着くように努めていました。こちら側がそうやって言うのは簡単です。でも、それで自分をコントロールして、いつもと変わらないようにプレーできるから、彼女はスゴイのです。
言葉をかけたからといって、すぐマインドを変えられる選手というのは、いるようであまりいません。ましてトーナメントリーダーで、さらにこの悪天候ですから。それをコントロールできるのは、やはり彼女がトッププロたる所以じゃないですかね。でも、“どんなときでも落ち着いている”のではなく、“落ち着いている風”ですから(笑)。
いずれにしても、まわりの選手からそうやってみられるのは、ジエの強さですね」(斎藤キャディ)
2週連続優勝、そして自身初の日本女子プロゴルフ選手権制覇に向けて。最終日のプレー中も、やっぱりシン・ジエは、落ち着いて見えた。
写真/姉﨑正