賞金ランクトップを走る今平の今シーズンは、勝利こそないものの、圧倒的な安定感が光る。14試合に出場し、予選落ちはわずかに2回。マッチプレーを除いて予選を通過した11試合中7試合でトップ10に入り、そのうち5試合を3位以内でフィニッシュしている。
つねに優勝争いに顔を出すことで、着実に賞金を積み上げているのだ。気の早い話だが、もし仮にこれからの10試合、今平が勝利を挙げないまま賞金王となったら、それは1973年のツアー制施行後例がなく、史上初となる。
今シーズンの今平がどのようなゴルフをしているのか、スタッツ(部門別データ)を見てみても、見事な数字が並ぶ。ドライビングディスタンスは290.35ヤードで45位、フェアウェイキープ率は60.55%で21位とティショットの指標はまずまずながら、パーオン率は70.33%で2位と抜群の数字を残している。
今平のショット力を高く評価するのが、ゴルフスウィングコンサルタントの吉田洋一郎だ。
「まだ若いですが、今平選手は技術的に非常にしっかりした“ゴルフが上手い”選手。とくに、背は高くないもののロングアイアンの弾道の高さ、そして精度は大きな魅力です。2回ほど取材させてもらいましたが、大人しいけれど、静かな闘争心を内に秘めているタイプで人間性もいい。将来はアメリカに挑戦したいと思っているのだと思いますが、まずは日本で賞金王をとってもらいたいですね」
平均パット数も1.7576で7位と高い数字を残していることから、「ただ乗ってる」だけではなく、しっかりとチャンスの距離につけられていることが分かる。ショット、パットともに好成績を残しているのだから、当然の帰結としてバーディ率は3.98で3位、パーキープ率は86.88%で2位と高く、平均ストロークは69.88で堂々の1位だ。
素晴らしい数字が並ぶが、プロゴルファー・中村修は、賞金王に向け、最後に必要なのはデータに現れない部分だという。
「賞金王を争う時松隆光選手は曲がらないタイプ。星野陸也選手は飛距離が魅力の大型タイプ。対して、今平選手は総合力に長けたバランスタイプ。それぞれタイプは異なりますが、やはり最後はグリーン上でのパットの勝負となります。今平選手の平均パット数はランク上位ですが、入れれば勝ち、外せば負けといったパットを今後どれだけ入れられるか。当たり前といえば当たり前の話ですが、優勝であり、賞金王が決まるというシビれる局面では、そこがもっとも大切になると思います」
現在の賞金ランクは1位の今平以下、2位のクロンパ、3位の時松、4位の星野、5位の秋吉翔太まで、トップ5全員が20代と若い選手で占められている。全員が賞金王未経験という中、果たして終盤に向けどんなドラマが観られるのか。その中心には、今平周吾がいるのは間違いがないだろう。
撮影/姉崎正