日本屈指の名門ゴルフ場として知られる廣野ゴルフ倶楽部には、ゲストのための「エチケット手帳」が存在する。ゴルフマナー研究家・鈴木康之の著書「ゴルファーのスピリット」から、“ひとレベル上”のゴルフマナーをご紹介。

廣野には廣野の流儀がある

廣野ゴルフ倶楽部はゴルフ倶楽部の伝統的なるものを最も厳しく継承し、実践している希少な存在の一つです。それゆえに廣野は廣野であり続けています。

私が訪ね、ラウンドしたのは二度。わずか二度の経験ではありますが、廣野の人々のゴルフの楽しみ方の片鱗に触れることはできました。

廣野にはゲストのためのホールガイドを兼ねたエチケット手帳があります。同じようなものを作っているところは他にもあります。しかし、「当倶楽部は、独自のゴルフマナーを継承しており、プレーヤー自身で行っていただくことが多々あります」と謳っているのは恐らくここだけでしょう。

プレー前の注意、服装、歩き方など、五十数項目の廣野の流儀が記されていますが、その中のいくつかを紹介しよう。「 」の引用のあとに蛇足を承知で解説をつけます。

「オナーはティショットをしてからスコアをつけましょう」グリーン上をのろのろ歩きながらスコアをつけるのは百害あって一利なしの行為です。速やかに次のティへ向かってショットするのが先、という注意です。オナーを取った者が次にすべきことは速やかな次のティショット以外ありません。

画像: 「オナーはティショットをしてからスコアをつけましょう」これが“廣野の流儀”のひとつ

「オナーはティショットをしてからスコアをつけましょう」これが“廣野の流儀”のひとつ

「切り取ったターフは元に戻し、キャディーに砂を入れさせてください」目土をしたかどうかはキャディーではなくプレーヤーの責任です。

「後続組がワンオンしても、みだりに拍手はやめましょう」近くにアドレス中のプレーヤーがいるかも知れない。それに、ワンオンすなわち拍手に値するショットとは限らないからです。

「当倶楽部では、キャディーはグリーンに上がりませんので、旗竿の抜き差しやボールのマークなどは、すべてプレーヤー自身で行ってください」グリーン面をできる限り踏圧で傷めないためです。「ボールに近づくときもできるだけグリーンを横切らず、グリーンエッジを廻りましょう」出る時もです。

ひとレベル高いゴルフ・エチケットです。普通のエチケット・ブックに書いてはありません。それほど廣野の人々の流儀はレベルが高いのです。

戦後荒廃した廣野の復旧の先頭に立った名理事長の乾豊彦さんは次のようにおっしゃっています、「プロゴルファーが来たってビジターフィーをとります。プロを特に歓迎するなどという姿勢を持ちません。ゴルフクラブはメンバーのためのものなんです」と。選手諸君、エチケット手帳を読んで下さい。そこには「スコアより、良いマナーを心がけましょう」とも書いてあります。

「ゴルファーのスピリット」(ゴルフダイジェスト新書)より※一部改変

撮影/有原裕晶

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