PGAツアー最終戦「ツアー選手権」が目前に迫っている。この試合によって1000万ドル(約11億円)のビッグボーナスを手にする年間王者が決まるわけだが、自力でその称号を掴み取ることができるのは現在のポイントトップ5の選手のみ。データ分析の専門家ゴウ・タナカがトップ5の共通項を数字から読み解いた。

数字から見えてきたプレーオフ現在トップ5の傾向

フェデックスカップは最終戦を残すのみとなり、自力優勝の可能性が残されたのは5名に絞られた。ブライソン・デシャンボー、ジャスティン・ローズ、トニー・フィナウ、ダスティン・ジョンソン、そしてジャスティン・トーマスだ。

この5人のスタッツを分析し、トップ5、トップ10(ポイントランキング6-10位)、そしてツアー平均値(中央値を使って算出)を比べ、2018年ツアーを上位で戦うにあたり貢献度の高かった要素を紐解いていく。

画像: 現在のフェデックスポイントトップ5。写真左から1位ブライソン・デシャンボー、2位ジャスティン・ローズ、3位トニー・フィナウ、4位ダスティン・ジョンソン、5位ジャスティン・トーマス

現在のフェデックスポイントトップ5。写真左から1位ブライソン・デシャンボー、2位ジャスティン・ローズ、3位トニー・フィナウ、4位ダスティン・ジョンソン、5位ジャスティン・トーマス

調べた項目は下記だ。

・バーディ率(パー5、パー4、パー3)
・パーオン率
・ストロークゲインどパッティング(SGP、パッティングのスコアに対する貢献度)
・スクランブリング(パーオンを逃したホールでパーかそれより良いスコアで上がる確率)
・フェアウェイキープ率
・ドライビングディスタンス

上記の項目すべてにおいて、トップ5は平均値よりも上回っているのは容易に想像できるのだが、1つだけ平均以下の項目があった。それはフェアウェイキープ率だ。なんとツアー平均より、トップ5平均、トップ10平均のどちらとも低かった。そしてトップ5の平均が最も低いという結果となったのだ。

ツアー平均は61.29%、トップ5の平均が59.824%だ。ここで言えるのは、フェアウェイキープはあまり意味を持たず、60%ほどあればゴルフにおいては問題ないということだ(2018全米プロゴルフ選手権で、タイガーはフェアウェイキープ率36%で、最終日6アンダーを記録した)。

画像: 全米プロゴルフ選手権最終日には6アンダーを叩き出したタイガー・ウッズ(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権)

全米プロゴルフ選手権最終日には6アンダーを叩き出したタイガー・ウッズ(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権)

他のすべての項目でトップ5、10ともに平均値を上回っていたのだが、その中でも圧倒的にトップ5が平均値を上回っていた項目に注目してみよう。それは、バーディ率(とくにパー5とパー4)、とドライビングディスタンスだ。

トップ5全員がパー5バーディ率の部門においてトップ8入りを果たしている。パー4バーディ率は11位以内、バーディ率も11位以内だ。他の部門でこれほど全員が高いランキングのものは他に見当たらない。パッティングのランキングは71位、アプローチでは104位という順位なのにトップ5にいる選手もいる。

トップ5のバーディ率平均は4.4(1日に4.4個)と非常に高い。ツアー平均は3.63なのでその差はかなり大きい。1日にだいたい0.8打も違うのだ。トップ10の平均は3.94なので、トップ10と5の差もほぼ0.5打と、2日で1打差が出る計算になる。

トップ5のパー5バーディ率平均は54.29%、ツアー平均は43.73%とその差は歴然だ。トップ10平均は49.152%でトップ5とは5%離される結果となった。トップ5のパー4バーディ率平均は20.7%、ツアー平均は16.82%、トップ10平均は18.94%とパー5同様、ランキングと相関する結果となった。

次にドライビングディスタンスだが、トップ5の平均飛距離は310.36ヤード、ツアー平均295.8ヤードに比べて約15ヤードも違う。これはアイアンの1番手強の差だ。ちなみにトップ10の平均は306.24ヤードで平均よりも10ヤード以上多い。この差は非常に大きい。

データを見ていて、おもしろい現象が見られた。それはパッティングとアプローチにおいてだ。当然、トップ5、10ともに双方の数値はツアー平均を上回っているのだが、アプローチにおいてはトップ10のほうが、トップ5よりも数値が良く、アプローチ部門1位にトップ10の1人であるウェブ・シンプソンが君臨する。パッティングも平均こそトップ5の方が良かったが、トップ10に入るジェイソン・デイが1位の成績を収めている。

では上記のデータ分析から傾向をまとめてみる。ランキングにもっとも影響を及ぼすのはバーディ率で、その中でとくにパー5、そしてパー4のバーディ率が大事ということだ。パー3のパフォーマンスは影響が少ない。

そしてドライビングディスタンスが大きく影響していることも顕著だ。パー5、パー4でのバーディ率が上がる理由に飛距離の優位性があるからである。パー3のバーディ率が影響していないのもうなずける。パッティング、アプローチは100位を超えてしまうパフォーマンスなのにトップ5、10入りをしている選手も数人いるのでマストではないことが分かる。

つまりトップ5までに入るには、まず飛距離がないとだめで、その理想的には310ヤード以上、最低303ヤード、そしてバーディ率が理想的には4.4以上、最低4.15、パー5バーディ率が54.29%以上、最低53.31%必要ということだ。パター、アプローチがどんなにうまくても飛距離がないとトップに立つのは非常に困難だということが言える。

画像: ジェイソン・デイはパッティング1位の成績を持つが、トップ5には入れていない(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権)

ジェイソン・デイはパッティング1位の成績を持つが、トップ5には入れていない(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権)

ゴルフは、飛距離、そしてバーディ率を土台とし、アプローチ、パターでカバーするという構図だと言ってよいだろう。

撮影/姉崎正

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