アンケート調査によれば70%以上の女性がゴルフ場で「女性差別で嫌な思いをしたことがある」と回答しているという。たとえば女性の飛距離を揶揄するような、いわば“飛距離ハラスメント=飛びハラ”とでもいうべき発言が、実は女性ゴルファーに嫌な思いをさせているとしたら…? 女性ゴルファーのコミュニティサイト「CURUCURU」代表・時田由美子が、世の男性ゴルファーに問いかける。
女性にとっての5000ヤードは、男性の7500ヤード
ずっと昔から変わらない先入観や上から目線で、嫌な思いをしている女性ゴルファーはたくさんいます。
アンケート調査によると、80%以上の女性が「ゴルフは女性に優しくない」、また約70%が「女性差別で嫌な思いをしたことがある」と答えています。「女性だけだとなぜか打ち込まれやすい」「ゴルフは好きだけど、男性のプレーペースについていくのが当たり前というのはヘン」といった声もあります。
男性プレーヤーやゴルフ場から見ると、女性は下手・遅いというイメージが根強いのでしょう。でも、女性だってその点は申し訳なく思っているのです。しかし、ここには、女性のヤーデージが長すぎるという、本人には対応できない問題があります。
女性ゴルファーのドライバー飛距離を集計すると、大きな山が2つできます。1番大きな山が150ヤードで、もう1つの山が180ヤードです。前者がごく標準的な女性ゴルファー。後者は女性の飛ばし屋です。
150ヤードの女性たちは、自分が飛ばないことを知っているので、同伴の男性ゴルファーに遅れをとらないように、レギュラーティとレディースティの差をもっとつけて欲しいと思っています。ナイスショットで150ヤードですから、ちょっとミスをすれば、100ヤード近くも置いていかれてしまうのです。
そんな彼女たちの焦る気持ちを知らず、多少レディースティが前の方にあると「ずいぶん前でズルいな」などという発言をする男性がいます。その手の発言に内心カチンと来ている女性が多いことを、知ってほしいものです。
女性はデビュー時から男性の「バックティ相当の距離」でプレーしている
100ヤードは、7番アイアンで打つ女性がダントツに多く、140ヤードのパー3ホールで最も多く使用されるクラブはドライバーと5番ウッドです。5番ウッドを選ぶ女性はドライバーの飛距離が180ヤード層の女性たちで、ドライバーの飛距離が150ヤード層の半数は、ドライバーを手にするのです。
いかがでしたでしょう。男性読者の皆さんは、女性の”飛ばない具合”にビックリされたのではないでしょうか。これは初心者に尋ねたアンケートではありません。7番アイアンで100ヤードの女性たちはビギナーでも特に飛ばない女性でもなく、アベレージゴルファーなんです。なかには「飛ぶ」女性もいますが、その方が特別なのです。
では、男性のアベレージゴルファーの7番アイアンの飛距離はどれくらいでしょうか?
仮に150ヤードだとすると、少なく見積もって男性は女性の1.4~1.5倍飛ぶ計算になります。長い番手ほどミスの確率が高くなることを考えると、女性が男性と同等のスケールでプレーするには、現在のレディースティがいかに長すぎるか、よく分かると思います。女性が5000ヤードのコースをプレーすることは、男性が7000~7500ヤードをプレーするのと同じ難易度といえるのです。
女性は全員がコースデビューの時から男性のバックティ相当の距離で、迷惑をかけないように焦りながらプレーしているのです。途中でイヤになってやめてしまう人がいても当然です。現在ゴルフを続けている女性は、そのハードルを越えた方々です。
もちろん、大して飛ばなくても上手な女性もいますし、コースデザインなどを考慮した場合の距離という考え方もあると思います。しかし、飛距離という極めて単純な(分かりやすい)尺度で考えて、結果的に女性に対してのゴルフのハードルを高めていることは事実なのです。
(『ゴルフ場セミナー』2015年11号より転載)