3連覇に挑む畑岡奈紗に注目が集まる第51回「日本女子オープン」が今日9月27日に開幕した。元世界ランク1位や日本ツアーで賞金女王を争うトップ選手に混じり、母としてこの試合に臨むプロがいる。出場120名中唯一のママさんゴルファー甲田良美に取材した。
2010年「リゾートトラストレディス」で優勝
甲田良美は高校時代はソフトボールの強豪校で汗を流し、18歳になってからクラブを握ったという遅咲きプロ。2009年に藤本麻子や大江香織とともにプロテストに合格し、同期の中では一番早くレギュラーツアーで優勝を飾った。
その後結婚し、子宝にも恵まれた。2015年から出産と育児のため試合を離れていたが、今季は2017年の予選会(QT)のランキング92位の資格で、ステップアップツアーを主戦場にレギュラーツアーは2試合出場している。
レギュラーツアーでは、佐々木慶子、土肥功留美、佐藤靖子などがママゴルファーとして活躍中だが、「日本女子オープン」には出場していない。日本女子オープンはLPGA(日本女子プロゴルフ協会)管轄の試合ではなく、日本ゴルフ協会(JGA)の主催によるもので、独自の出場資格を設定しているからだ。
たとえば2018年の賞金ランク30位以内(CATレディース終了時)などレギュラーツアーに出場している選手であってもその出場資格は厳しいものだ。その資格に漏れた選手は地区予選もしくは最終予選からの挑戦をしなくてはならない。
甲田の出場した地区予選はプロ、アマ含めて106名参加する1日競技。その中で上位21名に入って通過を果たすと、次はレギュラーツアーの選手が多く出場し、140名中50名が通過する2日間の最終予選を30位タイで見事に通過し、ナショナルオープン本戦の出場権を獲得した。
「子供が少し大きくなってきて試合で数日家を空けると『ママがいない』と心配するようになって。ちょっとでも出かけようとすると離れようとしなくなってきました」(甲田)
そんな理由から、地区予選、最終予選、本戦すべて自宅から通える「日本女子オープン」に狙いを絞っていた。保育園や家族に子供を預けて仕事に行く、世の働くママと同じスタイルだ。
甲田は、結婚・出産後もこうしてトーナメントの舞台で戦えることを「家族のサポートが一番大きい」と言う。
「旦那さんと相談しながら、開催地域やスケジュールを見て出られる試合はなるべく出るようにしています。同じママさんで頑張っているプロもいるのですごく励みになっています。(開催コースの千葉CC野田Cは)コースセッティングもタフですが予選通過して週末まで頑張りたいですね」(甲田)
ママゴルファーの姿は、同僚のプロゴルファーの目にはどう映っているのだろうか。父が甲田のキャディを務めたりと、家族ぐるみで付き合っているというプロ入り同期の藤本麻子に話を聞いた。
「歳は離れていますが同期ですし仲良くさせてもらっています。アマチュアや海外からの選手も出場するのでプロでも100名くらいしか出られない試合ですし、ママになってラウンド数も少ない中で予選会から勝ち上がってきたことは、すごいことだと思います」(藤本)
女子ツアーは低年齢化が進み、黄金世代をはじめとしたハタチ前後の選手の活躍も目立つ。そんな中、女子ゴルファー日本一を決める「日本女子オープン」に、35歳のママさんゴルファーが予選を勝ち上がって出場する。その姿は、多くの女子プロたちの将来像のひとつになり得るはずだ。
週末に“自宅通勤”のママゴルファーが元気にプレーする姿が見られることに期待したい。
※一部訂正致しました(2018.09.27 17:20)