ギア好きゴルファーなら先刻ご承知の通り、ブリヂストンのツアーB JGR(以下、JGR)といえば、プロも使用するものの、その中身は非常にやさしくつかまりのいいドライバー。実はこのクラブ、二人の世界のトッププロに愛されている。
一人が、今年スコア「59」を出したブラント・スネデカー。そしてもう一人が昨年の全英オープンで2位に入ったベテランのマット・クーチャーだ。彼らはなぜこのクラブを使うのか? ギアに詳しいゴルフライター・児山和弘は言う。
「近年ドライバーヘッドの大型化が進み、現在のトレンドは、テーラーメイドの『M4』、ピンの『G400』などに代表される、フェースの開閉が起こりにくい“高慣性モーメントドライバー”です。慣性モーメントの数値が5000(g・cm2)前後のドライバーに対し、JGRはその数値が4000強と、抑えめなのがポイントなんです」(児山)
児山によれば、ドライバーの進化が進んだ結果、パターを除いた他の12本との性能的な差異がどんどん広がり、ドライバーだけ特殊な打ち方が求められるようになっているという。それに対し、慣性モーメントが小さいJGRは、海外のトップ選手にとっては他のクラブと振り心地が揃うというメリットがある。
「クーチャーも、スネデカーも、小ぶりなハーフキャビティアイアン(J15CB)を使うプレーヤー。JGRの現代のドライバーとしては控えめな慣性モーメント、ボールをつかまえるクイックな挙動は、彼らにとってはアイアンに近い感覚で振れるのではないでしょうか。二人とも飛ばし屋ではなく、ボールをコントロールするのが生命線のプレーヤーですから」(児山)
オートマ車全盛の時代にあって、数少ないマニュアル車。そんなニュアンスだ。日本のアマチュアにとってつかまりのいいドライバーは、海外のトップ選手のとっては、操作性のいい、極端にいえばフェアウェイウッド感覚で使えるクラブになるのかもしれない。
プロゴルファー・中村修も児山の意見に賛同しつつ、こう付け加える。
「JGRは、つかまりを良くするために、ライ角(フェースのスコアラインを地面と平行に構えたときに、地面とシャフトが作る角度)をアップライト(急角度)にしています。基本的に、ライ角がアップライトなクラブは長身のプレーヤーに向きます。その意味で、193センチのクーチャー、188センチのスネデカーにはフィットすると思います」
また、クーチャーとスネデカーにはもうひとつ、見逃せない共通点がある。ドローヒッターだという点だ。
「一昨年、ブリヂストンオープンの練習日でスネデカーのプレーを見ましたが、とある右ドッグレッグのホールで、右の林を向いて構え、右に打ち出してドローを打っていました。少しでもドローがかからなければOB一直線。絶対にドローするという確信がなければできない攻め方です。JGRはつかまりのいいクラブなので、彼にとっては『絶対に左に戻ってくる』安心感が持てるクラブなのではないでしょうか」
というわけで、日本のアマチュアが選ぶ理由とはだいぶ違うような、根っこの部分は同じなような、そんな理由でスネデカーとクーチャーはJGRというクラブを選んでいるようだ。それにしても、日本のアマチュア向けクラブを使っている。それだけで、この二人のプロになんともいえない親近感が湧くから不思議である。