飛距離とパーオン率を結びつける
「総合力の高い選手ですね。アプローチも柔らかく打てるしグリーン周りの対応力も高い」
比嘉をこう評するのはコーチを務める辻村明志。辻村によると、オフからトータルドライビング5位以内を目標に、練習を重ねていたのだという。トータルドライビングとはドライビングディスタンスの順位とフェアウェイキープ率の順位を合算したランキングのこと。ファー&シュア(飛んで曲がらない)の指標となるランキングだ。
「もともと飛距離は出るほうでしたが、オフは飛んで曲がらないショット力に磨きをかけてきました。(飛距離が出て、フェアウェイをキープできれば)2打目でしっかりピンを攻められるのでパーオン率もよくなっています。70点くらいの調子でも優勝争いできるようになったことが今季の成績につながっています」(辻村コーチ)
結果、トータルドライビングとパーオン率の順位を合算したボールストライキングというランキングで比嘉は1位。名実ともに、ツアー最強のショットメーカーと言える。
そんな比嘉は普段どんな練習をしているのか。練習場での様子を観察したところ、手元にヘッドカバーのついたクラブを差し出し、そのヘッドカバーに当たらないように打つ練習を繰り返していた。さらに、ボールの前後にはほぼアイアンヘッドの幅でシャフトとボールのカゴを配置。
男子ツアーでは片山晋呉が複数の練習器具を組み合わせて独自の練習を行う通称“シンゴ打席”が有名だが、さしずめその女子ツアー版、“マミコ打席”とでも呼ぶべき風景だ。この練習をウォッチしたプロゴルファー・中村修は言う。
「このような練習自体は必ずしも珍しくありません。5割とか7割くらいのスウィングでドリルとしてやる場合が多いのですが、彼女の場合はフルショット。しかも6番とか5番アイアンで打っていたと思います。この練習の目的は、ダウンスウィングでの手元の浮きを抑え、ボールにしっかりとエネルギーが伝わるインパクトをつくること。それを、手元が浮きやすいフルショットでやるのがすごいんです」(中村)
しかも、ヘッドカバーを釣っている辻村コーチはヘッドカバーを前後左右に揺さぶっている。それだけ精度が要求されるし、集中力も必要だろう。
「自分の悪い癖を理解し、それを矯正する練習方法を根気よく続け正しい感覚を身につける、当たり前のようですが、改善すべき点を選手とコーチが同じ方向を向き結果を出すことはなかなか難しいもの。それを徹底しているからの好調なんだと、納得がいきました」(中村)
改善点を見抜くコーチの力、それを理解して根気よく続ける選手。オフからコーチと選手で取り組んだ地道な練習で積み重ねた結果、実際のスタッツや成績に結び付き結果を出している。
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