稲森佑貴の初優勝で幕を閉じた日本オープンだが、もう一人大躍進を遂げた選手がいる。3位タイの成績を残した沖縄出身の28歳、嘉数光倫(かかず・てるみち)だ。
現在AbemaTVツアーを主戦場にする嘉数だが、今年は日本オープンまでにレギュラーツアーに6試合出場し、予選通過は3度。RIZAP KBCオーガスタでの23位タイが最高順位という成績だったが、日本オープンでは見事な優勝争い。当の本人も、日本オープンの結果には「手応えがあった」と話す。
「充実した1週間でした。手応えを感じたプレーができました。今年はAbemaTVツアーからミズノオープン、ツアー選手権、RIZAP、日本オープンと出場する中で、甲子園でいうと1回戦から決勝戦まで勝ち抜く間に成長していくような感じでした。1番の成長はパッティングです。技術が上がってきて安定してきました。それに伴ってメンタルが安定してきました」(嘉数)
そんな嘉数は現在レギュラーツアーにおいてトータルドライビング部門で1位の記録を持っている。ドライビングディスタンスとフェアウェイキープ率を合わせて評価する部門で1位ということは、すなわち総合的に見てドライバーが一番上手い選手ということ。
試合ではフェード系の球でフェアウェイをとらえていたが「昔からドローでイメージは出すんですけど、スウィングはフェード系なんですよ」と嘉数。そのフェード系の球筋で、ドライバー平均飛距離は297.88ヤードで10位の飛距離と、フェアウェイキープ率61.22%で19位の安定性を両立させている。身長168センチと決して上背のあるタイプではないが、スウィングは力強い。
ドライバーの飛距離と精度に加えて、日本オープンの最終日ではアプローチの上手さも光った。
「でもアプローチはウィークポイントだと思っていて、課題にしてました。先輩の永野竜太郎さんに教わったり、先週、コーチをしてくれている父親(沖縄のエナジックゴルフアカデミー校長の森勇さん)が来てくれていて、アプローチも見てもらいました。そこでチェックポイントを指摘されてそれを気をつけたらよくなりました。どうしても手で調整しようとして球が強くなっていたのを左の股関節に乗せながら下半身主導で振ることで上半身もついてくるようになったんです」(嘉数)
日本オープンの獲得賞金で賞金ランクは50位に急浮上。戦いの場がAbemaツアーからレギュラーツアーに移りつつある嘉数に、今後の目標を聞いた。
「そうですね、推薦での出場を2試合いただいて……。日本オープンが自信になりました。人生が変わるかもしれない後半戦になりました。(後半戦の目標は)先週いい位置でのプレーを体験してしまったので、欲を言えば優勝を目指していきたいとなりますが、足元をみてまずは予選通過です。通過したら上を目指してガンガン行きたいと思います」
ガンガン行った先には、プロ初シード、そして初優勝が待っているに違いない。