最終日、13番からの6連続1パットという圧倒的なパフォーマンスを見せた今平選手。実は、優勝を争った川村昌弘選手は前半、5連続1パットを決めるなどハーフ10パットで15アンダーまでスコアを伸ばしていました。それに対し、後半は今平選手がハーフ10パット。いつも以上に、グリーンを制するものがコースを制する、そんな風に言いたくなる大会でした。
今平選手はここまで昨日の優勝を含めてトップテン入りが8回。2年連続で獲得賞金は1億円を超え、26歳になったばかりですが、トッププロとしての風格も感じられるようになってきました。
昨季と今季の違いをスタッツから見てみると大きな違いはバーディ率(1ラウンド当たりのバーディ獲得率)と平均パット(1ホール当たりの平均パット数)にあります。昨年のバーディ率は3.89個の5位と悪くありませんでしたが、今季は4.13個で1位。確実にバーディが取れるようになっています。
もちろん好調なショット力にも要因がありますが、平均パットを見てみると昨年の1.7578で7位から今季は1.7344で3位へと向上。パッティングの向上が成績に直結していると言えます。
おそらく現地やテレビで観戦した人も納得だと思いますが、それはブリヂストンオープン最終日によく現れていました。パーオンできなかった14番、15番では3メートル前後のクラッチパットを沈めてパーをセーブし、16番からは怒涛の3連続バーディ。
どのパットでも感じたことは「インパクトのゆるみがない」点です。ゴルファーなら誰でも下りのラインや、高速グリーンで、打つ瞬間に力が抜け、狙ったラインから外れたり、思わぬ大ショートをしたりした経験があると思います。かといってしっかり打ち過ぎると狙ったラインから外れカップを大オーバーしてしまうから困りものなのですが……。
手の動きでパターをコントロールすると、どうしてもこのようにゆるんだり、その反動でパンチが入りやすくなりますが、今平選手のパッティングは、手よりも背中がよく動いているように見えました。アドレスで作った手首の角度を変えずに背中をしっかり動かして打つ、いわゆる大きな筋肉を使って打つスタイルです。手の感覚で調整することがないことが、インパクトでのゆるみのなさにつながっているのだと思います。
また、ゆるみのないパッティングのコツは、テークバックよりフォローを大きくとることにあります。打ちたい距離に対してテークバックが大きいと、ヘッドは減速しながらインパクトを迎えるのでどうしても力が抜けやすくなります。今平選手は、低く小さいテークバックから、フォローはやや大き目のアッパー軌道で加速しながらインパクトをしています。インパクトでゆるみのない、転がりのいいパッティングのお手本のようなストロークです。それに加えて、14番、15番のピンチで諦めず、絶対に勝つんだという姿勢を見せた意志の強さも見逃せません。
もうひとつ、パターにも注目してみました。オデッセイのツアー担当、中島申隆さんは言います。
「トップ杯東海クラシックの前に(パットが)少し右に抜けるという話があって、本社の計測器を使って調べたんです。すると、昨年に比べるとストロークの精度や再現性はかなり向上していましたが、打点がトウ側に1ミリだけ芯からズレていることがわかったんです。そのため、オーワークスブラックのマークスマンというモデルに変更したたところ、打点とパターの芯が一致して出球が安定したんです」(中島)
残り6試合で自身初となる賞金王を狙う今平周吾選手。賞金王を獲得し、さらには世界ランク50位以内に入って、来季のマスターズへ出場する姿をぜひ見てみたいですね。