今季、CATレディースでうれしいプロ初優勝を遂げた黄金世代の大里桃子。大里と一緒にツアーを転戦するのがキャディ・コーチ役も務める父・充(みつる)さんだ。娘と二人で競争厳しい女子ツアーを戦う上での苦労はどのようなものか。そして、娘の未来図をどう描いているのか。父の本音を聞いた。

みんなのゴルフダイジェスト編集部(以下、編集部):優勝後、なにか変化はありましたか?

父・充さん(以下、父):優勝した翌週からも、やっていることはまったく同じです。予選を通るか、通らないかというところでやるのは(優勝する前と)同じ。それが本当の力です。優勝したから毎週10位くらいのところにいられるなんて、そんなアホなことはない。勝ったからといって、やることは変わりません。

画像: CATレディースで初優勝を果たした大里桃子(写真は2018年のCATレディース 撮影/岡沢裕行)

CATレディースで初優勝を果たした大里桃子(写真は2018年のCATレディース 撮影/岡沢裕行)

編集部:プロテスト合格後すぐの優勝でした。

父:昨年のプロテストを一打足りずに悔しい思いをして、今年(のプロテスト)は20アンダーを目指してやっていました。トップ通過したエイミー・コガさんが20アンダーでしたが、(大里は)ワンショットミスして、池に入れてダボにしたんです。それで18アンダー。その1打があったから課題になったし、ワンショットの重みを感じることができたと思います。

編集部:なるほど、失敗から学んだことが優勝につながったわけですね。

父:予選落ちして、テレビでその試合をみると、第三者的にプレーを見られるんですよね。(そうすると)自分が無理なことをしていたのがわかる。上手い人たちは簡単にプレーしているのに、自分たちは無理にグリーンを狙って難しいところに外しているよね、と。本当に失敗から学ぶことが多いです。僕もプロキャディではないので(ラフから打ったときにボールが飛びすぎる)フライヤーの計算ひとつできなくて、奥に外して難しくしていました。(父・娘ともに)アマチュア同士で周りを見て学んでいます。誰も教えてくれませんから。

編集部:お父さんも、競技ゴルフの経験があるんですか?

父:県レベルの大会や、九州アマチュアの予選会に出ていました。クラブチャンピオンには7回なって、ハンディも0までいきましたが、娘がゴルフをやり始めて、そちらに目がいくようになって、やめました。仕事は3年前に辞めています。高校三年生にあがる頃には、学校から帰ってくるのを待って、練習場に行っていました。

編集部:親子一体で戦ってきたわけですね。

父:本人と同じように、良ければ嬉しいし、悪ければ悔しい。本当に一緒の気持ちです。戦友でもあるし、同じ仕事をする仲間でもあります。親子なのでね、プロキャディさんからも「親だからそこまで言えるんです。言えるから良いんです」と言ってもらえました。

画像: コーチ・キャディとしても娘を支える充さん(写真は2018年のCATレディース 撮影/岡沢裕行)

コーチ・キャディとしても娘を支える充さん(写真は2018年のCATレディース 撮影/岡沢裕行)

編集部:ツアーにデビューしてみて、いかがでしたか。

父:アン・ソンジュさんやシン・ジエさんの最後のショットの精度とか、ゾーンに入っているようなパッティングをみると、追いつけないなと。スイッチを入れて、それ(ゾーンに入ったプレー)ができるのが一流だと思います。それをギャラリーになってみているようじゃまだまだです。

でも、(ツアー)一年生でも、同じ土俵に立てば同じく試合をしなければならないし、人が見てすごいなって思われるようになってもらいたい。見せてナンボだと思うんです。まだまだ(黄金世代の)同級生の中でも粗い。その分伸び代があると思って、先輩や同級生たちに肩を並べられるように、技術・気持ちも含めた総合力を上げていかなくてはいけません。

編集部:今後、成長してもらいたい点はどこですか?

父:やっぱり大人の感覚になってもらいたいですね。賞金を稼いで、その数字(記事執筆時点で約2115万円、賞金ランク47位)をみると稼いでいる気になりますが、経費を考えて、(自分ではなく)プロキャディさんをお願いするとしたらまだまだ足りないよとね。そういう厳しさをわかるまでは、(娘とツアーを転戦するのが)僕の仕事だと思っています。

編集部:将来的には、“子離れ”するのでしょうか?

父:早く一人立ちしてほしいですね。ツアーで必ず来年の職場を確保できる(賞金シードを獲得できる)レベルになるまで。日本女子オープンで一緒に回ったアン・ソンジュさんから、「桃子はいくつ? 20歳? あと2年我慢しなさい。私は23歳になるときに、お父さんから離れて自分でやるようにした。あなたにはまだお父さんが必要」って、言ってくれましたね。(了)

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