松田鈴英選手が注目されたのは、2017年のプロテスト。1学年下の“黄金世代”が多数参加する中、見事トップ合格を果たしました。年末のQT(予選会)を18位の好順位で突破して迎えた今季前半戦は初めてのコースばかりで予選の当落線上でのプレーが続きましたが、中盤からの17試合では2度の3位を含むベストテン入り6度と、一気に賞金ランクを駆け上がってきています。
ツアーに同行する父・直樹さんに話を聞くと、まさかここまで上がってこられるとは思ってなかったと愛娘の成長に驚いていました。
「この短い期間でものすごく成長してきています。プロキャディさんや一緒に回る先輩プロたちからいろいろ学ばせてもらったおかげだと思います。娘は、性格的に自分の力でやりたがるし、ミスしたときに慰められるのを一番嫌がるんですが、その辺の性格が(ツアープロに)向いていたのかと思います」(父)
勝みなみ、新垣比菜、小祝さくらなど黄金世代が注目を集める中、その“一個上の先輩”としてしっかりと存在感をアピールしている松田選手ですが、その好調の要因はどこにあるのでしょうか。「三菱電機レディス」の練習日、実家のある滋賀県から会場である埼玉県の武蔵丘ゴルフコースへと移動してきた松田選手をウォッチしました。
軽く練習したあとに9ホールの練習ラウンドに出て、練習場に戻るとショット、バンカー、アプローチ、パットと暗くなるまでみっちりと練習に励んだ松田選手。その練習の中で印象的だったのが、ティアップしたボールを3つ並べてアイアンでゆっくりと打つ練習法を入念に繰り返している姿でした。
プロテスト合格前からコーチを務める黒宮幹仁プロコーチにこの練習法の狙いを聞いてみました。
「ティアップした球を打つ練習は、コーチをし始めたころから続ける練習メニューです。トップで背中が反りかえる姿勢を矯正し、入射角をそろえるためのものです。彼女にとっては基本になるところなのでバロメーター代わりに続けるようにしています。ここまで成績が右肩上がりにくるとは思っていませんでしたが、彼女の強いところはひとつのことにこだわり過ぎず、場面場面で対処できるところ。いち早く自分の状態に気づいて臨機応変に対応できることですね。ただ、成績が上がってきて勝ちたい気持ちが強くなってきているので、ペース配分を考えずに練習し過ぎる点が心配です」(黒宮)
目の前の先輩たちの技術を吸収し、成長できるときには一気に高みへと成長しておきたいところ。まさに今がその時を迎えているのだと思います。
ベテラン、中堅に、激しい競争が繰り広げられている同世代のプロたちも加えた中でシード権を獲得できるのはわずかに50名。女子ツアーで生き残るのは簡単なことではありませんが、松田選手にシード権の心配はもうありません。
残り少ない後半戦、松田選手がさらにツアーを盛り上げてくれそうです。