今回分析したのは、タイトリストが飛びにこだわって開発し、飛び性能が口コミで広がってヒットクラブとなっている「TS2」「TS3」ドライバー。そして、稲森佑貴、香妻琴乃ら契約選手を初優勝に導いたスリクソン「Z585」「785」ドライバーのふたつの兄弟モデル。さっそくヘッド計測データの一覧をご覧いただこう(表1)。
ヘッドの重量や高さから、外見からでは分からない重心に関する数値まで、全13項目のヘッド計測データが並んでいる。中でも、より大きな違いとして挙げられるのは「重心距離ですね」と、プロゴルファーの中村修。
「重心距離とは、シャフトの軸線上から芯までの距離のことです。この数値で変化するのはヘッドの返りやすさ。重心距離が短ければヘッドが返りやすい=フェースコントロールがしやすい。長ければヘッドが返りにくい=直進性が高い、といった具合です。
スリクソンのZ85シリーズで比較してみると、Z585(重心距離39.1ミリ)はフェースを返さずに打つドライバー、Z785(重心距離35.8ミリ)はフェースを返していくドライバーということがヘッドデータからわかります」(中村)
4種の重心距離の違いをまとめると、Z585>TS2>Z785≧TS3の順。左にいくほど重心距離が長く(ヘッドが返りにくく)なり、右にいくほど短い(ヘッドが返りやすい)というわけだ。
もう一つ中村が注目したのは「重心深度」だ。重心深度とは芯からヘッドの重心までの距離のことを指すが、これで何が変わるのだろうか。
「重心深度が浅ければ勢いが強くてスピン量の少ない球になり、深ければスウィートエリアが大きくなって打点のミスへの寛容性が高くなります。
TS2は重心深度が39.6ミリと今回の4種のなかでも非常に深くなっていて球が上がりやすく、かといってスピンもかかりすぎないような作りです。一方でもっとも重心位置が浅いのは35.9ミリのZ785、低スピンで飛距離性能に期待ができそうですが、その分ロフトやヘッドスピードが必要になってくるでしょう」(中村)
まとめると、TS2>Z585≧TS3>Z785の順で左にいくほど重心距離が深く(寛容性が高く)なり、右にいくほど浅く(球が強く、スピン量が少なく)なる。
TSシリーズに関してはもう一つ、「重心角も特徴的です」と中村。
「重心角は大きければ大きいほどフェースが返りやすく、球がつかまりやすくなります。TSシリーズは両方とも31度ですが、これは一般的なクラブと比べてかなり大きいんですよね。TS2はつかまりそうな見た目通りの性能ですし、TS3もバルジがついて逃げてるような顔つきなんですが、クラブの機能としてはしっかりつかまえられるようにできています」
同シリーズのドライバーでもヘッド各部になされたミリ単位の調整が積み重なることで弾道や操作性は異なってくるし、まして別メーカーとなればなおさらだ。こうやって数字を比較することで見えてくることも多い。ドライバー選びの際にはカタログスペックの数字にも注目してはいかがだろうか。