今週ダンロップフェニックストーナメントで来日しているブルックス・ケプカをはじめPGAツアーのトッププロの多くが使うという最近流行りのレッスン用語「地面反力」。地面を踏みしめ、それが反発するエネルギーをスウィングに生かすというのだが、アマチュアが使うにはなんだか難しそう。しかし、実は日常的に僕らの近くに存在する身近なものだとゴルフスウィングコンサルタントの吉田洋一郎は言う。その正体と使い方を、やさしく解説してもらった。

誰もが使う地面反力

ここ数年、飛ばしのトレンドともなっている“地面反力”を使ったスウィング。インパクトで左サイドが伸び上がることで右肩が沈み込んで、クラブを加速させるという動きです。今週のダンロップフェニックストーナメントに出場するワールドランキング1位のブルックス・ケプカや昨シーズンの最終戦で劇的な復活優勝を飾ったタイガー・ウッズが使っています。

画像: タイガーのスウィングも地面反力を利用している(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

タイガーのスウィングも地面反力を利用している(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

地面反力は目に見えない力の向きを利用するものなので、最初はなかなか理解するのが難しいという声を聞きます。オンプレーンスウィングやボディーターンと違って、写真や動画で見たときに“現象として確認できない”というのが、難しいと感じる点かもしれません。

ですがこの地面反力は、筋力や体の柔軟性がなくても誰もが利用できる動きです。さらに言えば、日常生活の中で無意識に使っているものでもあります。地球上にいる限り使わずに生活することは困難ともいえるでしょう。どんな動きが地面反力に当たるのか体感をしてみて、ぜひ意識的にスウィングに取り入れてみましょう。

椅子から立ち上がるのに必要な地面反力

例えば椅子から立ち上がるとき、一度下に沈み込ように地面を押す動きをします。つまり力の方向は下に向かいます。その後、ひざが伸びて立ち上がるわけですが、このときは力は上側に向かっていると言えます。下に向かった力が固い地面ではね返され、上側に向かうことで立ち上がることができるのです。このはね返ってきた力が地面反力です。

では地面反力が使えないとどうなるでしょう。自分の足の下だけが地面でなく水が張ってある状況を想像してください。立ち上がろうとしたとき下方向に沈み込んでも水がその力を受け止めてくれず、水の中に沈んでしまうでしょう。上側への反動の力が使えず立ち上がることができないのです。

これは走るときやジャンプをするときも同じことが言えます。伸び上がるには一度沈み込んでから地面を押し込んむことでひざや股関節の進展が起きます。地面を押し込む力が強いほど、上側にはね返ってくる力も強くなります。

地面反力×シーソーの動きでヘッドが走る

ではなぜこのはね返ってくる地面反力が、ヘッドスピードを上げるのか解説したいと思います。まず前提条件として、正面からスウィングを俯瞰し、パターのように前傾が深い状態をイメージすると理解しやすいでしょう。

ダウンスウィングで左足を押し込むとその反動の力で左ひざが伸び上がり左肩が上がります。体の中心を軸にすると左が上がると右が下がります。肩のラインの中心を支点としたシーソーをイメージしてください。左側の跳ね上げる力が強いほど右肩の下りてくる速度が速くなります。結果、その末端にあるクラブヘッドが走るようになるのです。

画像: 左足を踏み込むことで左肩が上がり、右肩が下がる。シーソーをイメージするとわかりやすい(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

左足を踏み込むことで左肩が上がり、右肩が下がる。シーソーをイメージするとわかりやすい(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

どうでしょう、ちょっと難しく感じていた地面反力が、少し分かりやすくなったのではないでしょうか。

左足で地面を押すと反動で左肩が上がり、ヘッドが高速で走るようになる。これが地面反力を利用したスウィングの大枠です。筋力も柔軟性も必要ありません。試してみようかなと思った人は、私が地面反力の研究をするヤン・フー・クォン教授とその内容をまとめた書籍『飛ばしたいならバイオメカ 驚異の反力打法』(ゴルフダイジェスト社・11月26日発売)をチェックしてみてください。

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