二台の大型レーダーで全打席の弾道を計測する
いまやツアープロの間では不可欠のアイテムとなりつつある「トラックマン」。レーダーでヘッドやボールの挙動を直接計測し、スウィングデータや弾道データを正確に読み取るというもの。
そのトラックマンが日本の練習場に導入され、誰でも手軽に弾道データを見られるようになるという。場所は、神奈川県相模原市の「フルヤゴルフガーデン」。11月16日に行われたメディア向けの発表会でその概要を体験してきた。
通常の「トラックマン」は、ボール後方に設置するノートパソコンくらいのサイズのオレンジ色の箱だが、「フルヤゴルフガーデン」に導入されるのは「トラックマンレンジ」という練習場専用のシステム。各打席に個別に設置されるのではなく、練習場の屋根の上に1つとフィールド側に1つ、それぞれ大きな四角い箱が据え付けられ、その2台のレーダーで全46打席をカバーするのだという。
2台のレーダーユニットで計測されたデータは、練習場のフロントに設置されたサーバーに集約。そこから専用アプリをダウンロードしたスマートフォンやタブレットにWi-Fiで送信されるという仕組みだ。
計測できるデータは「ボール初速」「打ち出し角度」「打ち出し方向」「最高到達点」「キャリー距離」「トータル距離」「左右誤差」「ピンからの距離」の8項目。「左右誤差」と「ピンまでの距離」は、打つ前に選択したターゲットに対する結果となる。
実際に利用する際には、まずスマートフォンやタブレットなどの端末に「TRACKMAN RANGE」のアプリをインストール。起動して、使用打席を入力することで、自分の弾道データが端末に送られる。
あとは使用番手を選んでボールを打つだけだが、狙うターゲットを選択すると、そのターゲットに対する左右のズレや残った距離なども表示することができる。
アカウントを作成してログインすれば、ショットデータを保存して、後日来場時にそれを呼び出せる。
アマチュアにとってこういった弾道データを計測できる機会は少なく、できたとしても量販店の試打ブースなどなので、データに一貫性がない。いつも同じ場所で、同じ機器で計測できるというのは、すばらしく有為なことといえる。
実際の活用法としては、まずは自分の各番手の正確な距離を知るために最大限活用したい。とくに大事なのは、キャリーの距離。アマチュアゴルファーの多くは、自分の各番手の飛距離を知っているようで知らない。「7番で150Y、あとは前後10Y刻み」などと漠然と把握してはいるものの、そのうちキャリーがどのくらいでランはそのくらいなのか、きちんと明言できる人は少ないはずだ。
「トラックマンレンジ」で自分の正確なキャリーを知れば、愕然とする人も多いだろうが、それは決してネガティブなことではなく、マネジメントの土台となる「己を知る」貴重な情報になる。
データを保存することができるのも、比較検討するうえで非常に有効だ。たとえば気温30度の真夏の日と、気温ひと桁の冬場では飛距離がどう変わるのか。風向きによって各番手の距離がどう変わるかなどを正確に知ることができれば、ラウンドでの番手選びに役立つ。
もちろん、クラブの性能チェックにもこれ以上のアイテムはない。実際に購入する前に試打クラブを借りて持ち込めば、印象にとらわれないリアルなデータで比較ができる。「トラックマンレンジ」を利用すれば、「買ってみて失敗だった」ということは少なくなるだろう。
これは嬉しい! レンジボールとコースボールの性能差も変換してくれる
「トラックマンレンジ」のすごい点は、練習場で使われているレンジボールの実測データに加えて、それをコースボールで打った場合のデータに変換する機能がついている点だ。そのため、ショットのデータを「実戦」で使えるリアルな距離として把握できる。
実際に同じショットをレンジボールの場合とコースボールの場合で比較してみると、下の写真のような想像以上に大きな差が出る。
この機能さえあれば、練習場でのデータも、実戦同様のものとして有効活用できるだろう。
「トラックマンレンジ」のもう1つの優れたところは、「ゲーム機能」が搭載されている点だ。現在は「ニアピンゲーム」「ドラコン」「ピン取り合戦」の3種類だが、今後ゲームの種類を拡大していき、将来的にはシミュレーションプレーもできるようにしたいという。
これは、練習に遊び感覚を取り入れて楽しみながら上達できるというだけでなく、初心者やゴルフに馴染みのない人がゲーム感覚でゴルフを初体験するツールとして非常に有効だ。
「フルヤゴルフガーデン」では、12月1日から「トラックマンレンジ」の運用を開始する。練習のツールとしてはもちろん、子どもや家族と、恋人と、ゴルフを始めたばかりの後輩となど、いろいろな人とゴルフを楽しむツールとして活用できそうだ。