強い選手のマネをするより自分にあったスウィングを見つけよう
欧州ツアー開幕戦「ホンマ香港オープン」の練習日、練習場に陣取って、世界のトップ選手たちの練習風景をウォッチしました。
パッと見、リッキー・ファウラーやセルヒオ・ガルシアのような、フラットで入射角の浅いスウィングが多い印象。かつてのジョン・デーリーのような大きなトップの選手はまったくいません。やはりそれが世界の潮流なのかと、練習場で選手を教えていたパフォーマンスコーチのテリー・ローウェルさんに尋ねたところ、意外な答えが返ってきました。
「スウィングも強い選手に引っ張られて流行りがあります。ファッションと同じようにね。でもトップランカーたちを見てもスウィングは同じではないし、アップライトな高いトップを取る選手もいます。腕の長さや関節の可動域でも変わるし、厳密に言うと肘から先の長さでもマッチするスウィングタイプは違うんです」(テリー)
その人にマッチするスウィングがあり、それを間違うとプロでも結果を出すのに遠回りしてしまうことがあるというテリーさん。ではどうすればマッチするスウィングを見つけられるのかと重ねて問うと、重心移動のタイプ3種類と右手のグリップ3種類でタイプ分けする方法を教えてくれました。
まずはバックスウィング。右への移動が多いタイプ、その場で回転するタイプ、左寄りの一軸の3タイプに分かれると言います。
「腕を胸の前で十時に組んでテークバックしてみてください。そのときに自分が一番楽に動ける動きを探してください。右への移動が大きくても構いません。左足寄りに重心を置いても構いません。ここでは誰かの真似をするのではなく自分に合った重心位置を知ることが大切です」
次に右手のグリップも3タイプに分けられると言います。たとえば“史上最高のボールストライカー”とうたわれたベン・ホーガンは右手をかなりかぶせて握るプレーヤーでしたが、現在のトップ選手であるダスティン・ジョンソンは右手を開いて横から握っています。テリーはどっちが正しいというのではなく自分に合わないグリップをすると間違った動きになってしまうという。
「右手のグリップも左手の握り方と同じでスクェア、ウィーク、ストロングと3タイプあります。ベンホーガンはかなりかぶせてますね(ウィークグリップ)。どれが自分に合うかを知るには、誰かに手を当ててもらってインパクト付近の動きで力が入れやすい形を探してみてください。右手のひらが下を向く人、右ひじが締まってチョップするような形になる人、その中間と3タイプに分かれるはずです。右手のひらが下に向く人は、テークバックで無理に右ひじを内側に絞ってフラットなトップにする必要はなく、高いトップを取る方が自然です」(テリー)
強い選手のマネをするより、自分と同じタイプの選手のマネをすることが大切だとテリーさんは教えてくれました。なにが自分に合っているのか、それはなかなか自分ではわからないし、それを探すのもかなりの時間と練習を要します。そこで、テリーさんのようなコーチの存在がツアープロたちに必要とされるのだと思います。
そんなテリーさんの口から「実はぜひ会いたい選手がいるんだ」と言って出てきたのが、誰あろう石川遼選手の名前でした。PGAツアーに参戦していた当時から、石川選手に注目していたとテリーさん。
「これまで様々な選手を見てきましたが、リョウ・イシカワは世界のトップ30に入るポテンシャルがある選手です。会えるチャンスがあるなら今日にでも日本に行って話をしてみたいくらいです。きっといいきっかけになると思うんです」(テリー)
プロや上級者は膨大な練習量でスウィングを作りあげていますが、そのレベルであってもなかなか正解にたどり着けないのがゴルフの難しいところです。ましてやアマチュアゴルファーをや。みなさんもぜひ、テリーさんが紹介してくれたテストをしてみてください。自分のスウィングタイプを知ることは上達への近道に必ずなりますよ。
撮影/姉崎正