黄金世代が台頭したが……
「すごく新陳代謝が進んだ一年でしたね。黄金世代を中心とした若い選手が活躍し、来年以降その下の世代が上がってくることで、さらに新陳代謝が進むと思います。ただ、終わってみれば上位5名の顔ぶれは、力のある選手たち。若い選手が躍動した一方、まだトップ層を脅かすほどの若い選手が出てこなかったとも言えます」(井上、以下同)
現在、ツアーの中心にいるのはアン・ソンジュ、シン・ジエの韓国勢。そして、鈴木愛、比嘉真美子、井上に師事する成田美寿々らが挙げられる。勝みなみ、新垣比菜、小祝さくら、松田鈴英らはたしかに顕著な活躍を見せたが、複数回優勝している実力者たちの牙城を崩すほどの“個の力”は示せなかったとも言えるのだ。そして、井上は今年は来季以降の女子ツアーを占う上で非常に重要なトピックが起きた年だという。
「2000年生まれの山口すず夏選手のアメリカツアーのQT(予選会)通過は、後に続く選手の大きな刺激になったと思います。彼女は本当にすごい選手ですが、一方で、“彼女にできるなら、私も”と思う選手もいます。日本から、日本ツアーを経ずにアメリカツアーに挑む選手も今後増えてくるのではないでしょうか」
井上がそう予想する背景には、LPGA(日本女子プロゴルフ協会)のプロテストの“ハードルの高さ”も影響している。
「日本のプロテストのレベルは尋常ではないレベルで、アメリカツアーのQTとレベルが変わらないほどです。それくらい、日本ツアーは実力のある(プロテスト未合格の)選手の数に対して、プロテストの合格枠が少ない。いわば、レベルに対して蛇口を締めすぎています。ツアーで戦う実力がある、でもプロテストには通らなかった、そういう選手がアメリカに限らず、アジアやヨーロッパといった海外に活躍の場を求める可能性は高いと思います」
本当はもう少し日本ツアーに実力のある選手が吸収されるべきだが……という井上。最後に来季の国内女子ツアーの展開を占ってもらった。
「まずは(イ・)ボミがどれだけ復活するのかに注目しています。そして、黄金世代の2年目ですよね。ツアー1年目は初めてのコースばかりなので不利なんですが、彼女たちはその中でこれだけ躍動した。2年目になってツアーにも慣れて、誰が賞金女王争いに食い込んでくるのか、正直私にもまったくわかりません。同時に、2年目のジンクスという言葉があるように、1年目ほど活躍できない選手も出てくる。これだけ強い世代の中で、誰が頭一つ抜け出すのか、そこにも注目です」
毎年どんどん新しい選手が登場する異様に厚い選手層は、日本ツアーだけでなく、世界に活躍の場を求めて拡散しようとしている。そんな中、果たして来季の国内ツアーはどんな展開になるのか……終わったばかりの今から、楽しみだ。