幼馴染同士で世界の頂点に立った
先週、オーストラリア・メルボルン郊外のメトロポリタンGCで開催されたISPSハンダ・ワールドカップ。世界ランクに基づき、上位28カ国56名のプロたちが国の威信をかけて戦うゴルフの祭典で、フォーサム&フォーボール形式によって勝敗が決まる。
今年はマーク・リーシュマン&キャメロン・スミスの地元オーストラリアチームの他、今季すでに1勝を挙げているマット・クーチャーとカイル・スタンレーのアメリカチーム、今年9月にフランスで開催されたライダーカップで欧州チームの勝利に貢献したイアン・ポールターとティレル・ハットンのイングランドチームなどが優勝候補と目されていたが、終わってみればトーマス・ピータース、トーマス・デトリという二人の若手が代表するベルギーチームが2位と3打差をつけて優勝。一人112万ドル(約1億円)というビッグマネーを獲得した。
ベルギーの優勝は初でワールドカップの17番目の優勝国となる。1955年に4位に入賞したのが最上位だったが、今回の優勝で歴史は塗り替えられた。
3日目のプレーを終えて、2位のメキシコ、イタリア、韓国と5打差をつけてスタートしたベルギー。余裕のプレーかと思いきや、記者会見を終えると2人で練習場に直行し、トーマス・ピータースが、弟分のもう一人のトーマスにアプローチやバンカーショットなど、ショートゲームを念入りに教えていた。
彼らは8〜9歳の頃からの知り合いで、練習仲間。ジュニアの大会には一緒によく出ていたという。ナショナルチーム入りも共に果たし、ピータースがアメリカのイリノイ大学に進学すると、デトリも彼の後を追い、同じ道を進んだ。ベルギーはトーマス・ピータースが世界ランク70位であるのに対し、トーマス・デトリは140位なので、実際ピータースの技術と経験に頼る部分も多かっただろう。
デトリは「昔から長い間よく知っている経験豊かな彼と一緒にプレーすることができて夢が叶った。一緒に回っていて、とてもプレーがしやすいんだ。彼と一緒にプレーしているといろいろと勉強になる。とても彼は冷静だし、特に何も特別なことをする必要はないということがわかる。ただフェアウェイをとらえ、グリーンに乗せればいいんだ」と語っていた。
実際彼は、数ヶ月前に欧州ツアー・KLMオープンで3位に入る活躍を見せており、終盤にかけてだいぶ調子を上げてきていた。一方のピータースも今年はあまり目立った活躍もなかったが、やはり前週あたりからショットの調子を取り戻していた。そんな二人が今年最後の大舞台でベルギーに初のワールドカップをもたらしたのだった。
ところで今大会は、一人が世界ランク上位者で、もう一人は世界ランク1000位以内にかろうじて入っているという選手が組んで出場する国もあり、どちらも50位以内にランクインしている国は実はオーストラリアのマーク・リーシュマン(21位)とキャメロン・スミス(33位)のたった1組だけである。2位に入ったメキシコは、アブラハム・アンサーが60位であるのに対し、ペアを組んだロベルト・ディアスはなんと742位だ。
以前は各国のトップ二人が参戦することもあったワールドカップ。歴代の優勝者にはベン・ホーガン、サム・スニード、アーノルド・パーマー、ジャック・ニクラスといった米国のレジェンドや、リー・トレビノ(米国)、セベ・バレステロス(スペイン)、フレッド・カプルス(米国)、デービス・ラブ3世(米国)、タイガー・ウッズ(米国)、アーニー・エルス(南ア)などがおり、1953年から約60年以上の歴史を誇る伝統ある大会だが、近年ではPGAツアー、欧州ツアーが1年間を通して以前よりもオフが短くなったり、あるいは世界中で開催されることで移動距離が長くなってきたこともあってか、ビッグネームが一通り世界のツアーの最終戦を終えた後に開催されるワールドカップに出場することが以前よりも少なくなってきたように思う。
日本からは小平智、谷原秀人の二人が出場したが、最終成績は28カ国中23位と残念ながら振るわず。日本チームの優勝は過去2回あり、1957年霞ヶ関CC(2020年オリンピック開催コース)では中村寅吉と小野光一が旧カナダカップで優勝し、2002年には丸山茂樹と伊澤利光がメキシコで開催された大会で優勝した経歴を持つ。近い将来日本チームの3勝目が見られることが期待したい。