国内男子ツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の開幕が迫っている。厳しい出場資格をクリアした30名だけが出場できる試合だが、中でも今年とくに活躍した3選手をピックアップ、ツアー通算9勝の佐藤信人がその軌跡を振り返る。

悪い流れを断ち切ってつかんだ栄光。小平智のPGAツアー初優勝

日本ツアーもいよいよ最終戦。出場する30名を見渡してみると初優勝者が11名。複数回優勝者はわずかに2人でそれも2勝が最多です。やはり宮里優作・小平智の両選手が海外中心だった影響で争いが激化して、今年の日本ツアーはいろんな選手が優勝したという印象です。

ここに揃った30名は今年活躍した選手ばかりですが、その中でもこの1年で立場が大きく変わって素晴らしい飛躍をした3選手を振り返ってみたいと思います。

小平智選手。昨年は賞金ランク1位でこの大会を迎えながらも、宮里優作選手に逆転で賞金王を奪われました。それでも「自分は賞金王よりもマスターズ」と賞金王に対してはサバサバしたコメントが印象的でした。

その2週間後のインドネシア・マスターズの出場回避という選択をしたのが結果的には裏目に出て、年末最終のワールドランキングは抜かれて51位に落ち、マスターズの出場権はないまま2017年を終えました。

年が明けて2018年はまずソニーオープンからでしたが、最下位での予選落ち。秋にドライバーが割れてから年末に向けての悪い流れを完全に引きずってるかに思えました。ところがその翌週からシンガポール、ミャンマーと2週連続で2位タイに入ります。ワールドランキングをこれで一気に上げて初めてのマスターズ出場、さらにはマスターズ翌週のRBCヘリテージでPGAツアー優勝へとつながっていきました。

画像: 自身初のマスターズ出場にPGAツアー初優勝と、飛躍の年となった小平智(写真は2018年のマスターズ 撮影/姉崎正)

自身初のマスターズ出場にPGAツアー初優勝と、飛躍の年となった小平智(写真は2018年のマスターズ 撮影/姉崎正)

アメリカで勝った快挙にはもちろん大変驚きましたが、ソニーオープン最下位からシンガポールオープン2位のここの切り替えが連戦だっただけに特に驚きました。

日本で未勝利の韓国のハタチが海の向こうで大爆発

今回出場する選手の中では最年少で、まだ弱冠20歳のイム・ソンジェ選手。昨年は1年間安定した成績で優勝はありませんでしたが、日本シリーズ初出場を果たしました。翌週にWeb.comツアー(PGAツアーの下部ツアー)のQスクール(予選会)を控えていたのを知っていたので、日本シリーズ出場という強行スケジュールを組んだことにまず驚きました。日本シリーズは24位タイと奮いませんでしたが、Qスクールは無事突破してWeb.comメンバー入りを果たしました。

画像: Web.comツアーで賞金王となり、2018-19年シーズンからPGAツアーで戦うイム・ソンジェ(写真は2018年の日本シリーズJTカップ 撮影/姉崎正)

Web.comツアーで賞金王となり、2018-19年シーズンからPGAツアーで戦うイム・ソンジェ(写真は2018年の日本シリーズJTカップ 撮影/姉崎正)

1月のバハマから始まるWeb.comツアーですが、開幕戦でいきなり2位に4打差をつけてプロになって初優勝。翌週も同じバハマで2位に入りあっさりとツアー昇格ラインをクリアしてしまいました。日本での2年間で優勝経験がなかったので、このWeb.comツアーでのいきなりの優勝には大変驚かされました。その後も安定した成績を積み上げ、8月にはオレゴン州で2勝目を挙げて、終わってみれば開幕から最終戦まで1度も賞金ランク1位を譲らない完全賞金王というWeb.comツアー史上初の快挙を成し遂げました。

今季はPGAツアーでルーキーとして戦っています。1年前とはまったく違う立場になって、たくましくなって日本に戻ってきたイム・ソンジェ選手のプレーが楽しみです。

昨年シード落ち。今季は初優勝を含むシーズン2勝。市原弘大の躍進

市原弘大選手の昨年の今頃はダンロップ・フェニックス、カシオワールドと連続で予選落ちし、賞金ランクも88位に終わり、シード権を落として苦しい流れのままQTファイナルに向かっていました。QTでは初日74と大きく出遅れ、4日終わっても60位タイという位置でしたが、最後の2日で一気に順位を上げて10位でQTを終了しました。

36歳になって迎えた最初の試合、日本ゴルフツアー選手権を5打差からの逆転で初優勝。初優勝がメジャーというビッグタイトルだったので2勝目はなかなか難しいのではと個人的に思ってましたが、ダンロップフェニックスでこれまた5打差からの逆転で1勝目に勝るとも劣らないビッグタイトルを獲りました。

苦しい流れからQTを上位で通ったり、2回とも優勝の前週は予選落ちだったり、この切り替えの良さが市原選手の特徴であり、今までも何度か厳しいシード落ちなどがあってもことごとく這い上がってきた要因でしょう。

画像: 昨年は戦績が振るわずシード権を落としてしまうものの、出場権を確保し今年は2勝を挙げた市原弘大(写真は2018年の日本ゴルフツアー選手権 撮影/姉崎正)

昨年は戦績が振るわずシード権を落としてしまうものの、出場権を確保し今年は2勝を挙げた市原弘大(写真は2018年の日本ゴルフツアー選手権 撮影/姉崎正)

今週出場している30名がまた1年後にどういう成長を遂げているのか楽しみです。

This article is a sponsored article by
''.