「フルショット前提」でクラブを選ぶ
ドライバーのフェアウェイキープ率が断トツの一位を記録する稲森選手。その秘訣は「振り切ること」だと言います。そんな彼がドライバーに求めるのはつかまりの良さ。しっかりと振り切ったときにボールがキチンとつかまってくれるからこそ曲がらないのだそうです。
そして、今年の日本オープン制覇には、契約するダンロップのニューモデルの影響が大きいのだとか。
「芥屋(8月のRIZAP KBCオーガスタ)から新しいドライバーに変えたのですが、最初に使ったヘッドは少しつかまりが弱かったんです。それで調整してもらったドライバーが、日本オープンではバッチリハマりました」(稲森)
スリクソンの新しいZシリーズは「585」と「785」の2モデルがありますが、多くの男子プロは「785」を使います。しかし、稲森選手が選んだのはつかまりのいい「585」のほう。アマチュアでも十分に使えるモデルですが、クラブ選びにも稲森選手の曲がらない秘密があることがわかります。
また、7257ヤードでパー71という距離の長い設定だった日本オープンで威力を発揮したのが、フェアウェイウッドやユーティリティ。とくに5番ウッドでしっかりとグリーンにボールを止めていたのが印象的でした。
稲森選手のセッティングを見るとドライバー、3W、5W、3UT、4UTのウッド類5本に、アイアンは5番~PWの6本。それに50度と58度のウェッジ、そしてパターという内容です。今季の稲森選手のドライバーの平均飛距離は273.14ヤード(85位)。昨今のトーナメントは長めの設定になっている場合が多いことから、“上が厚い”セッティングに。ロングゲームの距離の打ち分けを最重視していることが伺えます。
アイアンを見てみると、これまた男子プロでは珍しいポケットキャビティの「スリクソンZ585」を選んでいます。市販モデルのロフトを見ると7番で31度とややストロングロフトで、低重心で球が上がりやすく飛距離の出るモデルです。
稲森選手のアイアン選びに関しては、彼がアイアン用シャフトとして採用するKBSを取り扱う「FST」のツアー担当・佐野正さんがこんなことを言っています。
「稲森プロは9番アイアンで150ヤードをベースに10ヤード刻み、5番アイアンは少し大き目で195ヤードです。KBSツアーの『Sテーパー110』のRシャフトを使っているのですが、シャフト選びの基準はあくまでもフルショット。フォローまでしっかり加速する感覚で振ったときに、初速が出て、風に強く、打ち出し角度ではなく最高到達点の高い弾道が出るシャフトがいい、と要望されました」(佐野)
アスリートモデルの中では飛び系のモデルZ585を選び、インパクトで調整せずに振り切るスウィングに合わせた中調子のRフレックスのシャフト。プロなのにR!? と思われるかもしれませんが、スウィングのタイプや求める弾道、飛距離を考え抜いたヘッドとシャフトのマッチングになっています。
ドライバーもアイアンもフルショットを前提にセッティングを組み合わせている点が稲森佑貴の特徴です。従って操作性が高いモデルではなく、つかまりや直進性が高いモデルを使用しています。
日本オープンを制したプロが、ドライバーにはつかまりを、アイアンには高さを求め、アマチュアでも使えるモデルを使用している。シャフトにはRフレックスを採用している。このクラブ選びのやり方は、アマチュアゴルファーにも大いに参考になるのではないでしょうか。