PGAツアーの下部ツアーにあたるWEB.comツアー。その来季出場権を争う予選会の最終日、あるプロを前代未聞の悲劇が襲った。クラブが盗まれた! それは、彼のジェットコースターに飛び乗ったような1日の幕開けに過ぎなかった。

「賞金5000ドル」でクラブを探すも、見つからず

コディ・ブリックは今季PGAツアーカナダで賞金ランク12位の成績を残した選手。来季はWEB.comツアーで戦うべく、予選会に挑戦していた。3日目を終えて10アンダーの73位タイといまいち調子が上がらず、出場権を得るには最終日の今日8アンダーは必要だろうと考えながら朝食を作っていた彼の元に、悲劇が舞い込む。クラブが盗まれたというのだ。

「一気にパニックになった」というブリックは、30分後には冷静さを取り戻し「ともかくなにかしらクラブを見つけないと!」と行動を開始する(余談だが、朝食は食べ損ねたそうだ)。

ブリックはすかさず契約先であるタイトリストに連絡。なんとかパター、ドライバー、3番ウッドの調達に成功する。しかし満足のいくフルセットは揃わず、結局ウェッジはコースのプロショップに借りたもの。アイアンセットの中身はバラバラという状態で、運命の最終日を迎えることになる。

画像: 盗まれたクラブへどこへ……!? (写真はイメージ 撮影/野村知也)

盗まれたクラブへどこへ……!? (写真はイメージ 撮影/野村知也)

ここからがゴルフの面白いところだがなんと14本バラバラのセッティング、それもほとんどテストもしていないクラブを使って、彼は最終日に9アンダーのビッグスコアを叩き出す。最終成績は25位タイ。40位タイまでに与えられる来季前半戦の出場権を、見事に獲得してみせたのだ。言わずもがな、最終日の9アンダーは、エースクラブで戦った3日間の10アンダーとほとんど変わらないスコアだ。

「(合わないクラブで)1日中耐えられたことを誇りに思う」とブリックはコメント。「めちゃくちゃ大変だったけど、報われたよ」という言葉が偽らざる実感だろう。

最悪のスタートから最高の結果を引き出してみせたブリックだが、手放しでは喜べない事情がある。それは、9年間愛用したスコッティ・キャメロンのパターの存在だ。

画像: ブリックのインスタグラムへの投稿。「クラブが盗まれた。誰であれ、僕のクラブを持っている、あるいは見たという人、5000ドルを差し上げます。質問は受け付けない」 www.instagram.com

ブリックのインスタグラムへの投稿。「クラブが盗まれた。誰であれ、僕のクラブを持っている、あるいは見たという人、5000ドルを差し上げます。質問は受け付けない」

www.instagram.com

「それは僕の一部みたいなものなんだ。もし可能なら、取り戻したい」

ちなみにブリックのエースパターは「カリフォルニア モントレー」。ドライバーはTS3でフェアウェイウッドはTS2と917F2、アイアンはT-MBとAP2のセットで、ウェッジはSM7だったそうだ。万が一見かけたら、本人のインスタグラムへ連絡を……。

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