練習場の“アミューズメント利用”が増えるかもしれない
「トラックマンレンジ」は、レーダーを使ってボールの飛びやクラブの挙動を実測し、弾道やスウィングをデータ化する計測器「トラックマン」を練習場用にカスタマイズしたもの。
打席の屋根とフィールド内に設置した2基のレーダーで練習場内すべてのボールを捕捉・測定し、Wi-Fiでユーザーのスマートフォンやタブレットにリアルタイムでデータを送信する。
「フルヤゴルフガーデン」では、通常の打席料・ボール代だけで誰でも利用でき、46打席すべてで使用可能。
計測できるのは「ボール初速」「打ち出し角度」「打ち出し方向」「最高到達点」「キャリー距離」「トータル距離」「左右誤差」「ピンからの距離」の8項目。このうち「左右誤差」と「ピンまでの距離」は、打つ前に選択したターゲットに対する結果となる。レンジボールをコースボールに変換する機能もついているので、データは正確だ。
普段練習しているショットの飛距離や球の曲がりなどをすべて正確に計測してくれるというのは、アマチュアにとっては画期的なサービスといえる。自分の正確な飛距離を知ることができるだけでなく、新しいクラブのテストなどにもたいへん有効だ。
「フルヤゴルフガーデン」では、1日の利用者数が導入前の2倍以上に増え、土日はつねに打席待ちが出る状況だと、“トラックマンレンジ”の実現に尽力した大蔵ゴルフスタジオの久光秀一郎さんは話す。
「もともと30代から50歳くらいまでの『何でもスマホで検索する世代』をターゲットとして考えていたのですが、まさにドンピシャでその世代の利用者数が激増しました。『フルヤゴルフガーデン』は利用者が高齢化していたのですが、その若返りに成功した感じです」(久光さん)
利用者の居住エリアも、従来は施設から5キロ圏内のゴルファーが中心だったが、これが7~8キロに広がってくれればという期待もある。いまはオープン直後の話題が集まる時期とはいえ、都内も含めた近隣の都市からわざわざ足を運ぶ利用客も多いことを考えれば、トラックマンレンジのために「わざわざ来る」客は確実に増えそうだ。
この日打席で練習していた40代の男性も、横浜市内から1時間かけて来たという。
「いままで漠然としかわかっていなかった自分の飛距離が正確にわかるというのはすごく便利です。今日は『とりあえず測りに来た』という感じで、ちょっと遠いので普段練習には来ないかもしれませんが、新しいクラブを試したり、スウィングを変えたりしたときにはわざわざ来たいと思えます」(43歳/男性/平均スコア95)
高齢の利用者には受け入れられにくいかも知れないという懸念もあったが、現在、来場者のうちで「トラックマンレンジ」を利用している人の比率は85%にものぼるという。スタッフが使い方をレクチャーするし、操作自体は難しくないので、あまり電子機器が得意でないという人にも大きな問題なく受け入れられているようだ。
実際、この日打席で練習していた利用客はほぼ全員が「トラックマンレンジ」を使っており、高齢の利用者もいた。
「最初の、アプリをインストールしたりするのはスタッフの方がやってくれました。普段からスマホを使っているので、別に難しくはないですよ。でもスマホだとちょっと文字が小さいのが難点かな(笑)」(71歳/男性/平均スコア100)
「フルヤゴルフガーデン」ではタブレットの無料貸し出しもしているが、自分のスマホでログインすればデータを保存して蓄積できるので、スマホでの利用が圧倒的に多いという。
「ボール代も変わっていないし無料で使えるので、すごく得した気分。でも、いろんな番手でいろんな球を打ったりしてチェックしていると、球数が増えちゃうね。球の曲がりとかも出るから『よし、フックかけて打つぞ』とか、遊び感覚のショットも増えて練習が楽しくなった」(55歳/男性/平均スコア85)という利用者もいた。
久光さんによれば、利用客の滞在時間も延び客単価もアップしているという。
「現在は3種類のゲーム機能がついているのですが、今後はゲームの種類も増やしますし、シミュレーションゴルフ的な使い方もできるようにしたい。いまは『練習』とか『計測』目的の方が多いですが、これに『アミューズメント』感覚の家族利用やカップル利用などが増えていくことを目指しています」(久光さん)
すでに、練習場の集客アイテムとして強力な存在感を発揮し始めている「トラックマンレンジ」だが、今後、久光さんの言うような「アミューズメント的利用」のニーズが増えれば、従来にない新しいゴルフ練習場の形として発展していく可能性を秘めていると言えるだろう。