左へ踏み込んで腕を振る
183センチ80キロと恵まれた体形を活かし、2018シーズンのドライビングディスタンスは302.93ヤードで堂々の1位。額賀辰徳選手といえば、なんといってもその飛距離に目を奪われます。
ドライバーショットの弾道は圧巻の一言で、早く振っているようには見えないのですが、ボールははるか300ヤード先に着弾します。日本人でコンスタントにキャリーで300ヤード飛ばせる数少ない選手の一人である額賀選手、そのスウィングを分析してみたいと思います。
まずはトップとハーフウェイダウンの写真を見てください(写真1)。トップで重心はやや右へ移動し、しっかりとねじられた体幹部が飛ばしのエネルギーを蓄えています。切り返しで左へしっかりと踏み込んでいますが、体だけを回すのではなく、腕も振り下ろしているという印象です。
トップから体を回そうとすると、体が開いてクラブが振り遅れてしまいますが、トップで作った腕とクラブの角度をキープしたまま腕を振り下ろすことで、いかにも「今から当たる」というポジションが作れています。
インパクト前後の動きでは左肩と左腕の作る角度に注目してください。3Dモーションキャプチャーのギアーズという機器を使ってPGAツアーの選手40名を計測し、分析したところ、すべての選手に共通している動きがいくつかあったそうですが、そのひとつにダウンスウィングで小さくなった左肩と左腕の作る角度が、インパクトでは大きくなっている点があるそうです。
写真2を見てください。額賀選手もPGAツアーの選手と同じく、ダウンスウィングで左肩と左腕の作る角度は小さく、インパクト直後の写真を見ると、その角度が大きくなっていることがわかると思います。
切り返しで腕と胸の距離は近づきますが、その後しっかりと腕を振ることにより、腕と胸の距離が離れ、それに伴って左肩と左腕の角度も大きくなるのです。体を回すだけでなく、手もしっかりと振る。これが、飛ばしの原動力となっています。
本人はクラブを速く振って遠くまで飛ばすにはどうしたらいいか、大学生の頃はそればかり考えていたと聞きました。遠くへ飛ばすスウィングを作り上げた結果、米ツアーの選手と共通する動きを身につけることができたのでしょう。
気をつけたいのは「手を振る」といっても、手打ちとは違うという点です。まず体がしっかりと動き、その後で腕、さらにクラブと連動してエネルギーが伝わっていく。手先ではなく、体幹が先に動くことが非常に重要になります。それにより運動連鎖が生まれ、爆発的な飛距離につながるのです。
2018年の初優勝後の試合では腰を痛めたため成績は奮いませんでしたが、世界に通じるその飛距離を武器に、2019年の活躍が大いに期待できる選手に成長すると感じました。狭い国内にとどまらず、海外へも目を向けて羽ばたいてくれることを期待しましょう。