20年近く前、星野英正と福祉大のキャンパスで会ったとき彼の首元にはプカシェル(貝)のネックレスがあった。
「サーフィンをするんです」
スラリとした体躯。血気盛んな運動部の学生というよりどこか醒めた大人っぽい雰囲気を漂わせていた。その星野に憧れ福祉大に入った宮里優作には入学式に密着させてもらった。
礼儀正しい優等生は「ナショナルチームで一緒にプレーして間近で星野さんの凄さを見てきました。海外の試合でも気後れしないし堂々としている。マット・クーチャーより上手いと僕は見ています」
と語っていたもの。
福祉大を選んだ一番の理由は星野だが練習環境が充実していること、そして「チームの雰囲気がとてもいい」ことが決め手になったという。
ゴルフ部を率いる阿部靖彦監督は野球経験者だがゴルフは素人。にも関わらず20年前から全国大会で他校を破り続けるチームをつくりあげたのは部員たちの力量はもちろんのこと監督の“強運”
もある。
「あの人は運を持ってるんです」。卒業生から何度この言葉を耳にしたことだろう。
運だけではなく充実した環境の整備にも監督がひと役かっている。打ちっ放しの練習場、アプローチ練習場、パッティンググリーン。さらに寒い仙台で年間を通して球が打てるよう立派な室内練習場&
トレーニング施設の必要性を学校側に訴え説得した。
恵まれた環境で切磋琢磨した学生がやがてプロとなりツアーの屋台骨を支える存在になる。驚くなかれ男女を通じて福祉大出身のプロゴルファーはいまや118名を数える。池田勇太、谷原秀人、谷口拓也、岩田寛、藤本佳則etc...枚挙にいとまがない。
先輩の背中を見て後輩は夢を追う。宮里や池田、谷原が立ったマスターズの舞台に来年は現在2年の金谷拓実が出場し11年にローアマのタイトルを獲得した松山以来の快挙を目指す。
またとないお手本がいるから後輩たちは自らに限界をつくらない。その上を行こうと下克上に挑む。
その一方で面倒見の良い先輩が後輩をフォローする。それが星野からはじまった東北福祉大イズムの正体なのかもしれない。