前作「M3/M4」と最新作「M5/M6」との一番の違いといえば、やはりフェース面にある2つの赤い点「スピードインジェクション」だろう。
新しいMシリーズは一度SLEルール適合外の高い反発係数を持つドライバーとして作られ、その後フェース面に開けた2つのポート(赤い点の部分)からレジン素材を注入することで反発係数をルール適合ギリギリにチューンしている。通常のドライバーとは異なる製法を採用することでルール内最大級の反発性能を実現し、さらには製造段階でできてしまう個体差の幅も少なくすることにも成功したというわけだ。
フェースには、前作で話題となった「飛んで曲がらない」ツイストフェースを引き続き採用。スピードインジェクションとツイストフェースが合わさった最新Mシリーズ、はたしてその実力はいかほどのものか。さっそく二人に打ってもらおう。
調整機能がさらに進化したM5
M5は460ccのスタンダードモデル「M5」と、435ccと小ぶりのツアーモデル「M5 TOUR」がラインナップされている。まずはスタンダードモデルから試打。
「打感がすごく良くなってます、柔らかいですね。前(M3)より硬さがなくなっていて、むしろ吸い付く感じのほうが強いかな。2035回転とスピン量も抑えめで、打ち出しの高さがしっかり出ている上に直進性が強い。全然曲がる気配がしないですね」(堀口)
試打した堀口はそう語る。計測結果を見るとヘッドスピード44.9m/sでボール初速は65.5m/s、総飛距離275ヤード。打ち出し角も16.2度と、すべてが高水準にまとまっていることがわかる。
続けてもう一振りする堀口。「少しこすっちゃったな」というのだが、結果は画像Aの通り。ミスヒットによる曲がり幅が少なく、高弾道で274ヤード。1打目と比べて1ヤードしかロスしていない。
「こすってもこのくらいの幅で収まるのはすごい。こすったという割にはミート率が高いことからもしっかり反発が効いて初速が出ているということがわかります」(中村)
「芯を外しても打感はそんなに変わらない気がします。打ってて気持ち良いですね」(堀口)
中村はM5の可変ウェート機能を使用、一番つかまる調整を施して試打。まずはニュートラルな状態と同じ感覚で打ってみる。
「そりゃあこうなりますよね(笑)(画像B参照)。完全にヘッドがターンするように下りてきています。大型ヘッドだからつかまりにくい、なんてことはないですね」(中村)
続いてつかまり度合いを確かめるため、スライサーをイメージして打つ中村。やはり曲がり幅は少なく、フェアウェイを十分に捉えられる範囲に収まっている(画像C参照)。
「スライスしたかなと思っても、しない。調整の幅が相当広いですね。逆に引っかかる人はトウ側に寄せたりと、自分なりに仕上げられるのは相変わらず良いところです」(中村)
M5 TOURは、435ccとかなり小ぶり。堀口曰く「ハードヒッター向きのドライバー」だという。
「構えた見た目がめちゃくちゃコンパクトです。スタンダードモデルと比べると球の勢いが強く、弾道はちょっと下がる感じですね(画像D参照)。打感も分厚く当たっている感触があります」(堀口)
計測結果を見るとヘッドスピード44.5m/sでボール初速は66.5m/s、総飛距離は275ヤード。スピン量が2444回転と若干増え、打ち出し角は10.9度とスタンダードモデルより抑えめに。ツアーモデルを謳っていることもあり、しっかり振り抜けるゴルファー向けの一本となっている。
M6は46グラムの大型ウェートで深・低重心化
M5/M6の進化の一つとして、クラウンに加えてソールのカーボン部分の割合も増加している点が挙げられる。それにより生まれた余剰重量を最適に配分することでクラブ性能が向上、その上で可変ウェートを用いて重心を調整できるのがM5だが、一方のM6ではソール後方になんと46グラムの大型固定ウェートを配置し、徹底した深・低重心化を図っている。
堀口が一振りすると、ヘッドスピード43.4m/sでボール初速は64.6m/s。272ヤード。スピン量2005回転、打ち出し角も15.3度と高めで、飛距離性能に関してはM5と同様の結果となったが、つかまり度合いや打感は大幅に違うと堀口。
「こっちのほうがつかまりますね。シャフトの影響もあると思いますが、後からつかまってくる感じがします。M5は吸い付くような柔らかさがありましたが、M6は打った時に弾いた感触があります。M6のほうが少しシャローになっていて、構えた時に前作よりもターゲット方向に構えやすくなってますね」(堀口)
続けて打った中村も、堀口の意見に同意する。
「たしかに構えた時の座りが良い。M5もそうですが、前作より開いたように見えなくなっています。打感もM6の方が弾く感じがありますね。標準のオリジナルシャフトも柔らかくてつかまりやすくなっている感じです」(中村)
「スライサーの方にとって非常に良いヘッドに仕上がってますよね」と堀口。前作よりも、よりつかまる方向に寄せてきているという。Mシリーズを使いたいけど使えなかったスライサーには朗報だ。
「逆に元々つかまり過ぎる人にとっては、少しつかまりすぎてしまうかもしれませんね。ヘッド自体のつかまり性能が高いので、つかまらないシャフトと組み合わせてみるのも面白そうです」(中村)
今回のMドライバー3種の特徴をまとめてみると、重心調整機能で幅広いゴルファーにマッチするM5、つかまりが良く、スライス気味で球が逃げてしまう人にオススメのM6、ハードヒッター向けのM5 TOUR、といったところだろうか。
いずれの3種もスピードインジェクションとツイストフェースの組み合わせによって、飛ばしと直進性を最大級のレベルで両立したMシリーズ2019年モデル。ぜひ手にとって進化を実感してみてほしい。
協力/PGST