現在世界ランク1位のジャスティン・ローズが本間ゴルフと契約した。そのセッティングからプロのコンビネーションスタイルに注目した。ギアライターの高梨祥明は「大・中・小」セットにしたほうが、きっとスムーズだと話す。それは一体なぜか改めて考えた。

ジャスティン・ローズのセットから学ぶ、フルサイズドライバーセットのあり方。

この1月に本間ゴルフと複数年契約した、ジャスティン・ローズの基本セットが明らかになった。

画像: ジャスティン・ローズのクラブセッティング(撮影/吉田洋一郎)

ジャスティン・ローズのクラブセッティング(撮影/吉田洋一郎)

ドライバー: Honma TW 747 460(9.5°)3w: TaylorMade M4 (15°)

5W: TaylorMade M3 (19°)

アイアン: TW747V (#4,#5), TW747 Proto (#5〜#10)

ウェッジ: Honma Custom Grind RAW (52°/56°), Titleist Vokey K Grind (60°)

パター: Axis 1 Proto

ボール: TaylorMade TP5

ドライバーは460ccヘッド。アイアンは複数モデルを組み合わせるコンビネーションスタイルだ。これは、典型的な米男子ツアースタイルといっていい組み合わせである。

最も典型的といえるのは、アイアンのコンビネーション。ショートアイアンからミドルアイアンはコンパクトヘッドのMBヘッド、ロングアイアンはそれよりもややオーバーサイズのヘッド(キャビティ、あるいは中空)とするのが、米ツアーでは一般的だ。ローズは2モデルのコンビネーションだが、選手によっては3モデル、4モデルを組み合わせてアイアンセットを構築する例も珍しくはない。それが近年の傾向だ。

アイアンのコンビネーションスタイルは、とくにいま始まったことではない。1995年、タイガー・ウッズは2モデルのミズノMPアイアンをコンビネーションして使っていた。2000年に入るとナイキゴルフやテーラーメイドなどクラブメーカー各社が上はキャビティ、下はブレードとなったコンビネーションアイアンセットを続々と発売するようになった。

ウッズの場合はロングアイアンほどオフセットが少ないモデルを選んでおり、ボールの上がりやすさ、実際の弾道を考慮したチョイス。メーカー提案のコンビネーションセットは、ロングアイアンほどミスにやさしいキャビティスタイルにするのが基本だった。いずれもヘッドの大きさは従来セットと変わらず、ロングアイアンが最も小さく、ショートアイアンが最も大きいヘッドだった。それが“アイアンセット”であることの証明でもあった。

ウッドに近づくロングアイアンと、アイアン重視の小ヘッドドライバー。

しかし、近年のプロたちは平気でショートアイアンと同じようなサイズの別モデルアイアンをロングアイアン領域にぶち込んでくる。ロングアイアンは小さいもの、という古い概念は現在のツアーではほとんどないのである。ヘッドが大きいほうがミスショットに対して寛容。ソール幅を広くすれば低重心にも、深重心にもしやすい。ボールも上がりやすくなる。こうした商品説明を聞きながらゴルフをしていれば、むしろロングアイアンほどヘッドは大きくするべきだろうと考えても不思議ではない。

実際に今やロングアイアンはユーティリティ化し、ウッド寄りの発想で作られ、使い手もそれを当たり前のこととして受け入れているのである。

ご存知の通り、ドライバーは飛距離アップやミスに対する寛容性を高めるためにどんどん大型化した。一方で、グリーンをピンポイントで狙うミドルアイアンからショートアイアンの大きさはほとんど昔と変わっていない。現代のクラブセッティングに必要なのは、この巨大ドライバー「大」と定番のコンパクトアイアン「小」をスムーズに繋いでいくのための工夫、「中」の選び方なのだ。

もう一度、ジャスティン・ローズのセッティングを見ていただきたい。ドライバーはフルサイズの460cc、アイアンはコンパクトなブレードのプロトタイプである。この「大・小」をうまくつなぐために、違うアイアン(おそらく「中」)が必要になるわけである。

こうして考えると、昨年から宮里優作が小さいTOYR Bのドライバー(260cc)を試している理由についてもよく分かる。彼はきっと米ツアープロとは逆のことを考えている。米ツアーで主流の「大・中・小」セットではなく、アイアン基準の「小・小」セットで戦おうというわけだ。ドライバーが小さければ「中」はいらない。

画像: 宮里優作が試しているブリヂストン TOUR B 260CCのドライバー(写真は2018年JTカップ練習日 撮影/大泉英子)

宮里優作が試しているブリヂストン TOUR B 260CCのドライバー(写真は2018年JTカップ練習日 撮影/大泉英子)

ゴルフはドライバーからパターまで、14本のクラブを駆使して行うスポーツである。だからこそ、番手のつながりをスムーズにする“工夫”、“知恵”が必要。その鍵を握っているのが、ヘッドの大きさ、そして長さなのだ。米ツアーのようにフルサイズドライバーを使うなら、中間的な大きさのユーティリティやオーバーサイズアイアンを組み合わせた「大・中・小」セットにしたほうが、きっとスムーズ。宮里のようにコンパクトアイアンの切れにこだわるならば、ドライバーをコンパクト化する「小・小」セット、あるいは「中・小」セットも大アリである。

こうしたヘッドの「大・小」(シャフト長さ)による振り心地の違いを一定にするために、今では“クラブMOIマッチング”というチューンナップも編み出され、一定の人気を博している。

最近はSNSなどのおかげで、リアルタイムでツアー優勝者のクラブセッティングを見る機会も多い。誰がどんなニュークラブを使っているかだけでなく、セット内でヘッドの「大・中・小」をどうコンビネーションしているか。そんなことにも今年は注目してみてはいかがだろうか。

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