ゴルファーならば、ロフト角という数字を知らない者はいないでしょう。たとえばドライバーなら9度よりも10度、11度のほうがボールが上がりやすくなります。さらに、ゴルフを熱心にされる方なら、ダイナミックロフトという言葉を聞いたことがあるかもしれません。インパクト時のロフト角のことです。
では、スピンロフトとはなんでしょうか。それは、ダイナミックロフトからヘッドの入射角を引いた数字で表されます。たとえばダイナミックロフトが15度、入射角がマイナス5度(5度ダウンブロー)であれば、スピンロフトは20度。
反対に、ダイナミックロフト15度で、入射角が5度(アッパー)であれば、スピンロフトは10度となります。この数値が最適なところに収まると、高打ち出し・低スピンの理想的な弾道となるわけです。
スピンロフトが何度のときにどんな弾道となるのかが気になるところですが、例として石川遼プロのトラックマンによる計測データを見てみましょう。
キャロウェイのニューモデル「エピックフラッシュ サブゼロ」をテストした際のデータによれば、インパクト時のダイナミックロフトは16.2度。アッタクアングルは4度アッパーで、スピンロフトは12.5度です。スピン量は1995rpmと非常に低く、打ち出し角は15.1度と非常に高い。ヘッドスピードが50.9m/sと高いこともあり、ボール初速は75.9m/s、キャリーで291.8ヤード、トータル316.3ヤードという素晴らしい数値となっています。
エピックフラッシュ サブゼロはもともとスピン量の少ないヘッドですが、アッパーブローでインパクトすることで余計なスピンの上昇を抑え、高い打ち出しと両立していることがわかります。石川プロにとって、スピンロフト12.5度というのはほぼ理想値と言っていいのではないでしょうか。
もし、アマチュアゴルファーに多いカット軌道のダウンブローであれば、スピンロフトの数値は大きくなり、スピン量がより増え、キャリーの数値は減っているはずです。仮に同じダイナミックロフトだとしても、軌道がダウンブローか、アッパーブローかによって弾道は大きく変化するんです。
身近に計測器がないと、残念ながらスピンロフトの計測はできません。ただ、インパクト時のロフト角(ダイナミックロフト)とクラブの入射角が作るスピンロフトが、弾道に大きな影響を与えるということは覚えておいて損はないのではないでしょうか。
撮影/三木崇徳