男子ツアーで活躍する時松隆光が幼少期から師事する「桜美式」ゴルフの提唱者・篠塚武久。テンフィンガーグリップを中心においた独自の理論が注目を集めるが、そのスウィングイメージは日本刀のそれだという。自身の著書「10本で握る テンフィンガースウィング」より、桜美式「刀打法」のグリップについてご紹介。

グリップは左手からではなく右手から握ること

「桜美式」テンフィンガースウィングは、刀をイメージして振る「刀打法」とも言えますが、左手からはクラブを握りません。人間が道具を扱うとき、わざわざ利き手ではないほうから握ってカタチを決めていくなんていうことはしません。利き手である右手から握ります。

さらに重要なのは、右の手のひらの向き。従来の常識だと、スクェアグリップにしろ、ストロンググリップにしろ、右手を垂直に立てるようにして、手のひらをターゲット方向に向けていました。これを「刀打法」では、右手のひらを上に向けて握ります。

画像: グリップは利き手である右手から握ろう。その際に右手のひらを上に向けて握るのがポイント

グリップは利き手である右手から握ろう。その際に右手のひらを上に向けて握るのがポイント

クラブを日本刀にたとえるなら、フェースは刃と同じ。切れる側の刃が「横」に向いていると考えればわかりやすいかもしれません。「テンフィンガー手刀グリップ」と言ってもいいでしょう。

画像: 寝かせた刀(フェース)を横に振って切るイメージ。右手のひらは横を向くのではなく、上を向いたまま動く

寝かせた刀(フェース)を横に振って切るイメージ。右手のひらは横を向くのではなく、上を向いたまま動く

張り手でパチンと「叩く」のではなく、空手チョップで手の側面でスッと「切る」。手の側面で切ることの優位性は、力まないのに力が強い、方向性が保てる、再現性が高いなど多々あります。

足の裏のパワーを使おう

さて、「テンフィンガー手刀グリップ」にすると、さらに良いことがあるんです。それは、手のひらが上を向いているので、足の裏の力を使いやすくなるということなんです。

手でプレーするゴルフにおいて、足の裏がそんなに大切な部分だとは、みなさん思っていないかもしれません。しかし、クラブと体との唯一の接点であるグリップはもちろん重要ですが、足の裏はといえば、地面と体との唯一の接点です。ここが活用できているかどうかで、大きく差が出るんです。地面の力を最大限使って、飛ばしのパワーにすることも可能ですからね。

それなのに、足の裏はシューズを履いて、スパイクまでつけて、どんな硬さのところを歩いているのかさえよくわかりません。さらに、両手を合体させたオーバーラッピングやインターロッキングで、利き手である右手のひらがクラブを握らずに左手の親指と人差し指を握らされていれば、足の裏からも手のひらからもほとんど情報が得られず、バランスも悪く、文字どおり「手も足も出ない」という状態です。

足の裏と言えば、よく、「親指の母趾球で踏ん張れ」とか「体重移動を足の裏で感じろ」とは言いますが、スウィングしている最中に、体のほんの一部のことを意識できるでしょうか? 右足の親指のつけ根の部分に意識を集中させたり、スウィング中、足の裏の重心の動きだけを追ってしまったら、ほかの部分で感じるべき大切な情報が消えてしまいます。

足の裏は手のひらと連動させるのが大事です。

手のひらと足の裏はともに、人間に与えられた、すばらしい感覚器官です。まず、足の裏で接地面から伝わる情報を感じ取ります。球を打つ際には、平らなところなどなかなかないわけですから、そこで得た情報をもとに、今度は手のひらで、クラブから伝わる情報を感じ取って球を打ちます。そして、足の裏と手のひらを連動させると、互いの感覚を鋭くさせ、体全体のバランスが無意識に良くなります。

たとえば、両手合体型のグリップで、テークバックで右手をひねりながらフェースを開いて上げてみてください。トップまでいったとき、右手の手首は甲側に折れ、手のひらがめくれた感じになる。不思議なことに、右足の裏もやはり内側が浮いてしまい、足までひねられた状態になってしまうんです。つまりは、無理にひねることによって、自らスウェイが起きやすい足の裏にしてしまっているということなんです。フォローでも同じようなことが起こるんですよ。

画像: 両手合体型グリップで右手をひねった動作をすると、自然と右足の内側が浮いてしまい、足までひねられた状態となる

両手合体型グリップで右手をひねった動作をすると、自然と右足の内側が浮いてしまい、足までひねられた状態となる

左右分担型グリップであれば、手のひらをずっと同じように感じ続けられます。だから、足の裏も安定したままでいられます。まして、手刀グリップは、手のひらを上向きにしたままなので、より感じやすいのです。

時松プロをはじめ、「桜美式」のジュニアたちのスウィングが静かだと言われるのは、足の裏をしっかり使って地面に立っているのも一因です。安定感があるから、揺れがない。また、足の裏を使って打てるから、力みも少ないのです。

腕の軌道が一定になる

また、手刀グリップには、これもゴルファーを悩ませるテークバックでの「腕軌道」を一定にさせます。45度というのが、90度の半分なので、人間に一番イメージしやすい角度であり、物理的に一番ムダのない動きができる角度なのですが、手刀グリップのまま斜め45度をイメージしてスッとテークバックすると、毎回同じように、クラブを上げられるのです。だから、クラブも無駄のない動きになる。再現性が高く、テークバックの軌道で毎回悩むこともないのです。

画像: テークバックの腕の軌道は、斜め45度をイメージすると再現性が高いスウィングになる。手のひらを上に向けると意識しやすい

テークバックの腕の軌道は、斜め45度をイメージすると再現性が高いスウィングになる。手のひらを上に向けると意識しやすい

このイメージをつかむドリルがあります。

家にあるテレビなどのリモコンを使ったもの。リモコンは、ボタンのほうを上に向けないと使えませんよね。ですから、そのように右手のひらに乗せて、そのまま、45度に上げるイメージをしながらテークバックしてみるのです。すると、ものすごく簡単に同じように上げられることがわかるはず。これで、同時に足の裏との連動性も感じられるはずです。

画像: テレビなどのリモコンを右手で上向きに持って振るだけ。横向きに持ったときと感覚が全く違うことがわかるはず

テレビなどのリモコンを右手で上向きに持って振るだけ。横向きに持ったときと感覚が全く違うことがわかるはず

逆に、リモコンを横に持ってみましょう。上手く45度に上げられず、足の裏もめくれる感じになりませんか?

「10本で握る テンフィンガースウィング」(ゴルフダイジェスト社)より

撮影/浅田紀元

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