ハードって“硬い”って意味だけど、振り切れないのは“重たい”からじゃない!?
Aさん「コレ、この間買ったドライバーなんだけど、ちょっと打ってみて」
Bさん「うひゃ〜、全然振り切れないよ。俺にはハードスペックだわ」
なんて会話をよく耳にする。“ハードスペック”、さて、クラブのどこがハードなのだろうか?
英語でHardは堅い(硬い)であることから、俺にはシャフトが硬い! といっているのかと長年思ってきたが、昨年あたりからこれはちょっと意味が違ってきたかな、と思い始めた。なぜなら、一部にシャフトの“軽・硬”ブームが起きていたからだ。40グラム台〜50グラム台の硬度Xシャフトを使う一般男性、シニア世代のゴルファーが増えてきたのである。
昔は硬い=重たいが常識だった。今は硬くしても軽量にできる時代。
現在はカーボン素材の進化と製造技術の成熟によって、軽くて、硬めのシャフトが作られるようになっている。ほんの数年前までは、硬くするにはカーボンシートを何層にも巻いて強さを出していたため、どうしても重ため(60グラム台後半〜80グラム台)の仕上がりとなってしまっていた。
しかし、今の高弾性カーボンや接着剤の少ないカーボンシートならば重量を増やさずに、ある程度まで硬いシャフトを作れるようになったのだ。
つまり、今の時代は必ずしも硬い=重たい ではなくなっているのである。
辞書をひくと、Hard(堅い・硬い)なものは扱いにくいために、そのような対象に向けて「ハードだ」というようになったとあった。しかし、“軽・硬”ブームが起こってみると、シャフトが少しばかりHard(堅い・硬い)でも、問題なく扱えることがわかってきた。扱いにくさの源は、硬いことではなくて、おそらく“重たい(重すぎる)”ことにあるのだ。
いくらシャフトが軟らかくても、ヘッドが異常に重たかったら振りにくいし、全体重量が重たすぎてもまた振りにくいだろう。また、スウィングウェートがD7とかあっても、振りにくい! ハードだ! と感じるはずなのである。
ゴルファーが“ハードだな”といいたくなるほとんどのことは、たぶんその重さからきている。ハードスペックなのではなくて、“ヘビースペック”である可能性が高いのだ。
試しにドライバーのヘッド側を持って、グリップを下にして振ってみて欲しい。シャフトの先端に重たいヘッド(200グラム弱)が付いていなければ、ピュンピュンと誰でも高速でドライバーを振ることが可能なはずだ。
また、先端が軽いとシャフトはほぼしならないが、この状態で“硬い! ハードだ”と思う人はいないはずである。ちなみに、シャフトがカーボンではなく、金属の棒だったらヘッドが先端に付いてなくても振るのは困難になる。棒自体がトゥ・マッチ・ヘビー(重たすぎる)だからだ。
ゴルフクラブに関係する、振りにくい、振り切れないと思わせるほとんどの要因が、硬さではなく、重さからきているのであれば、これからはハードスペックというのはやめて、ヘビースペックと書いていきたいと個人的には思う。“今日の会議はHeavyだったぜ”、などと日常的にはヘビーを使う場面も多いのだから、問題はないだろうと考える。
撮影/有原裕晶