ゼクシオが飛ばしに本腰を入れた!
やさしさに定評のあるヘッドで、直進性が高く弾き感もあるゼクシオアイアンの10代目、「ゼクシオ テン」。国民的クラブといってもいいゼクシオブランドだが、昨今の“ぶっ飛び系アイアン”ブームを意識したのかどうなのか、満を持して発表した飛び系アイアンが、「ゼクシオ クロス」だ。
ゼクシオ テンの7番のロフト角が29度なのに対し、ゼクシオ クロスは7番で25度。飛ばないアイアンというわけではないゼクシオ テンに対して、さらに1番手分ロフトが立っていることになる。7番で25度という強烈なストロングロフトは、他メーカーでいえば、プロギアのエッグPCくらいか。このジャンルのトップランナーと言えるヤマハの「インプレス UD +2」よりも、さらにロフトが立っている。
さて、ゼクシオ テンとゼクシオ クロスを比較してみると、見た目に大きく違うのは、ソール幅。並べてみると一目瞭然だが、バックフェースが出っ張っているぶんクロスのほうがかなり幅が広く、構えた時にソール部分が見えるほど。
ストロングロフトにすれば、当然ながらボール初速は上がるが、反面ボールは上がりにくくなる。ロフトを立てたことによる上がりにくさをカバーするために、ソール幅を広くし、重心を低くすることでボールを上げやすくすることができる。
よく、ぶっ飛び系アイアンに対して「ただロフトを立てただけ」という声が挙がるが、一面の真実である一方、それだけとは言い切れない。ただロフトを立てただけでは、ボールが上がらず、人によってはむしろ飛距離が落ちてしまうからだ。
ロフトを立てても扱いやすく、球が上がり、見た目の違和感も最小限に抑える。このあたりが、各メーカーの腕の見せ所となる。
さて、その飛距離性能はどれほどのものか、実際にゼクシオ テンと打ち比べてみよう。使用したのは7番、いずれも純正のスチールシャフトを差して試打を行った。
まずはゼクシオテンを手に取り、堀口が打つ。打ち出し角17.5度でボールは高く上がり、ヘッドスピード39m/s、 ボール初速54.3m/sで総飛距離は194ヤード。 スピン量も4546回転といういい弾道。オーソドックスな飛び系アイアンの弾道という印象だ。
「シャキッとした打音ですね。直進性は十分高くて、飛ぶし高さも出ます。構えた見た目もゼクシオらしいです」(堀口)
続いてゼクシオ クロスを構える堀口。「後ろが少し出っ張っていますけど、フェース側は普通のアイアンに見える。ボールが上がりそうな見た目ですね」。
打つなり「めっちゃ弾く!」と驚く堀口。結果はトータル217ヤード。打ち出し角は15.3度と高めで、スピン量も4039回転。ヘッドスピードはゼクシオテンを打った時と同じ39m/sだが、ボール初速は58m/sと約4m/s上昇しているのは、フェースの反発性能の高さも影響しているのかもしれない。
「217ヤード飛ぶだけでもヤバイのに、高さも十分に出ているし直進性も高いです」(堀口)
ロフトが立っているため飛距離が上回るのは順当と言える。が、それでもトータル217ヤードはすごい。
「上げようと思ったらまだ上がるんじゃないかなコレ」。堀口がそうつぶやき、今度はボールを上げるように打つ。すると目論見通り、打ち出し角は先ほどよりも約1度上がって16.2度。ヘッドスピード39.6m/sでボール初速は58.9m/s、総飛距離も3ヤード伸び、220ヤード。スピンは4025回転とゼクシオ テンに比べると500回転ほど少ないが、弾道はやはり、ブレのないまっすぐだ。
同じく試打をした中村は、「本当に打ち出した方向にまっすぐ飛んでいきます。かなり軽く打っても弾き感があって、従来のゼクシオとは違った飛距離性能を持ちつつ、フィーリング面はやはりゼクシオらしさがある。ソールが厚いので、結構滑っていってくれる感じもありますね」と評価。
「まっすぐに220ヤード飛ばせて、高さが出る。これだけ飛ぶと、もう7番という感覚じゃなくてもいいかもしれない」と堀口。より短いクラブでより飛ばせればゴルフはラクになるのは間違いないだろう。もちろん、スピンはゼクシオ テンに比べて少なくなるから、その分グリーンで止めるのは難しくなる。しかし、ボールの高さは遜色なく、通常営業のグリーンであれば、飛距離が伸びるメリットのほうが大きいように思える。
もちろん、番手表記がわかりにくくなるとか、短い番手のロフトギャップが空くといった細かい懸念もあるだろうが、ラクに飛ばせるのもまた事実。飛距離を伸ばしたい人は、一度手に取ってみると、新たな世界が広がるかもしれない。
協力/PGST