ゴルフを観ている人は「4割くらい」!? 地元民が大盛りあがり
過去何度かフェニックスオープンに取材に来ていますが、プロアマトーナメントが開催された水曜日、初めてスタジアムの内側に足を踏み入れていました。
まず驚いたのが、みんなゴルフを観ていないこと(笑)。なにをしているかといえば、基本的にはお酒を飲んでいます。お酒を飲んで、いい気分でおしゃべりをして、ついでにゴルフを観る、そんなイメージです。
聞けば、地元の企業がブースを買って、社員や家族と盛り上がったりするようです。非・ゴルファーも足を運ぶからこそ、1ホールに2万人という集客が実現するみたいですね。
プロアマでは、プロが打つ間も途切れることなく爆音がかかっていて、マイクパフォーマンスが4階まである客席を盛り上げます。ときには、プレーヤーがマイクを奪い、客席をあおるなんて姿も。野外フェスというか、巨大なお店でパーティをしている感覚です。マジメにゴルフを観ている人は4割くらい……?
松山英樹プロもそんな雰囲気が意外と嫌いではないようで、自分の携帯電話で写真を撮ったりしていましたが、この日会場を沸かせたのは、別の“日本人プレーヤー”でした。それは、地元・アリゾナの野球チーム「アリゾナ・ダイヤモンドバックス」で中継ぎ投手として活躍する平野佳寿投手。
松山選手の1組前でプレーしていた平野投手の放った打球は、見事ベタピンにつけるスーパーショット! 2万人の観客からの大歓声を浴びていました。ご本人に話を聞くと、「野球ではマウンドに立つまでは緊張するけど、投げてる間は緊張しない。ゴルフのほうが緊張するね(笑)」とのこと。しかし、何万人の観衆に見つめられる環境でナイスショットが打てるのは、さすがメジャーリーガーです。
このように、いいショットには惜しみない拍手が送られる一方、本戦ではグリーンを外すとブーイングの嵐を浴びることになります。みんな酔っ払っているので、そのブーイングも容赦がないんです。
少しマジメな話をすると、TPCスコッツデールは上がりの15番から18番まで、気を抜けないホールが続きます。そのなかで16番は難易度的には比較的低いホールですが、雰囲気を作るという意味では非常に大切なホールですし、スタンドに囲まれていることで、独特のプレッシャーもあります。
そんな中、松山英樹選手は予選ラウンドを地元・アリゾナ州立大学卒のフィル・ミケルソン、前年度王者のゲーリー・ウッドランドという凄まじい組でラウンドします。ツアー屈指の人気を誇るミケルソンが登場すれば、16番は大興奮状態になるのは間違いありません。
練習ラウンドを見ると、松山選手のアイアンショットは非常に切れているようなので、うまくこのホールをクリアして、流れをつかんでもらいたいですね。
さて、一日の取材を終えて、選手たちもとっくに引き上げた夜7時半頃、コースを後にしようとすると、16番のスタジアムからは変わらずにビール片手の笑い声が聞こえてきます。千鳥足で歩く女性も見ました。「居酒屋かっ」と心の中でツッコミを入れて、ホテルへ戻った次第です(笑)。
撮影/吉田洋一郎