「ウェストマネジメント フェニックスオープン」でPGAツアー通算5勝目を挙げたリッキー・ファウラー。決して大柄ではないが、その飛距離は平均300ヤードを超えてくる。そのメカニズムを、最新のスウィング理論に詳しいプロゴルファー・奥嶋誠昭が解説。

飛ばしの要素満載のスウィング

優勝した「フェニックスオープン」のスタッツを見てみると4日間の平均飛距離は318.7ヤードで11位。フェアウェイキープ率も69.64%で3位タイと飛んで曲がらないスウィングを表しています。

175センチ、68キロと米ツアーでは小柄な部類に入るファウラーですが、いったいどのように飛ばしているのでしょうか。スウィングを見れば一目瞭然、彼のスウィングには飛ばしの要素が随所に見られます。

ひとつ目の飛ばしの要素はテークバックにあります。両方のつま先を開き両ひざの間隔の広いややガニ股のアドレスから、両ひざの間隔をキープするように少し沈みこみながらテークバックをしています。

試してみるとわかりますが、このようにテークバックを行うと、下半身と上半身が分離され(捻転差が生じ)、腰から背中にかけて強いねじれを感じるはずです。ファウラーのスウィング写真を見ると、ベルトのバックルの位置は45度ほどしか回転していませんが、上半身は右肩までしっかり見えるのがわかります(写真1)。

画像: (写真1) 両ひざの間隔をキープしたまま沈み込むようにテークバックする(写真は2018年のWGCブリヂストン招待)

(写真1) 両ひざの間隔をキープしたまま沈み込むようにテークバックする(写真は2018年のWGCブリヂストン招待)

二つ目の要素は「Xファクタ―」すなわち、肩と腰との捻転差です。左ひざをアドレスの位置に戻すようにダウンスウィングが始動した際、肩のラインと腰のラインの差、すなわちXファクターが大きいのも飛ばしのポイントです(写真2)。

これは、体を適切な順番で動かせている証拠。このように体を動かすことで、筋肉は伸びたゴムが縮むような働きをします。そのことでよりヘッドスピードを高めることができるのです。

画像: (写真2)左のひざをアドレスの位置に戻すように切り返し腰のラインと肩のラインの差(Xファクター)が大きい

(写真2)左のひざをアドレスの位置に戻すように切り返し腰のラインと肩のラインの差(Xファクター)が大きい

そして三つ目の要素は地面反力です。インパクトの前後の画像(写真3)を見てみると、ダウンスウィングで踏み込んだ左足が、インパクトでしっかりと伸ばされているのがわかります。このように地面の反発力を使うことで、左サイドを素早く回転させヘッドをスムーズに加速させています。

PGAツアー40人の平均値とファウラーを比べると、インパクトでの胸の向きはほぼスクェアで胸の回転量は少ないタイプに分類されます。ダスティン・ジョンソンやブルックス・ケプカのように腕をリリースしない(胸の回転量の多い)タイプとは異なり、体を止めて腕を振るというか、腕もしっかり加速させて飛ばしていくタイプです。

画像: (写真3)インパクトに向けて踏み込んだ左ひざを伸ばすように地面反力を使う

(写真3)インパクトに向けて踏み込んだ左ひざを伸ばすように地面反力を使う

リッキー・ファウラーの強い点は、このように飛ばしの要素の多いスウィングであり、かつ100%に近いフルスウィングでしっかりと振りながら、方向性も兼ね備えている点です。方向性を出すためにトップではフェースが空を向くようにシャットに使い、フォローでもローテーションを少なくするような動きが見えます(写真4)。

画像: (写真4)トップでフェース面が空を向くようにシャットに使いインパクト後のフェースローテーションも抑えることで方向性がよい

(写真4)トップでフェース面が空を向くようにシャットに使いインパクト後のフェースローテーションも抑えることで方向性がよい

ファウラーのスウィングは、体の柔軟性や筋力があってはじめてできるスウィング。一般ゴルファーの方にはハードルが高いのは事実です。ですが、たとえば両ひざの間隔をキープしたままテークバックをしてみるのは試してもいいと思います。そうするだけでもかなりの”ハリ”を感じはずですし、ダウンスウィングのスピードも上がるはずですよ。

取材・文/みんなのゴルフダイジェスト編集部 写真/姉崎正

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