マグレガーゴルフジャパンの社員としてマグレガーCCにも関わりを持ち、自身プレーヤーとしてエリート競技にも参戦している松下健。業界向けのルールセミナーで講師役を務めたこともある彼は、新ルール施行後一カ月の現在時点をこう語る。
「マグレガーCCはアップダウンが激しく、グリーン面の見えないホールも多いため、打ちこみ防止の意味でピンを抜いてプレーして頂くローカルルールを採用しています。それでも“レディゴルフ”や、OBやロストボールのときに前進してプレーできるローカルルールの採用で全体的にプレーの進行が早まってきた印象があります」
レディゴルフとは、ホールから遠い人からではなく、安全に配慮した上で準備ができた人から先にプレーしてもよいという、新ルールで推奨されているプレー方法だ。これらが少しずつ浸透しはじめたことにより、進行がスムーズになったきたようだ。
プレーの進行が早くなることはゴルフ場にとって大きなメリット。これは新ルールによる良い変化と言えそうだ。
また、キャディ付きのプレーでの旗を差したままのパッティングには進行を早める以外にもメリットが多いという。
「新ルールではプレーヤーの承認なしにキャディがボールをマークして拭くことができるようになりました。近隣コースの話では、旗を差したままでプレーしてもらえると、グリーン上でのキャディさんの仕事がかなり減らせるのだそうです」
ピンの抜き差し、付き添いなどといった手間が省けたことで、キャディの仕事に空き時間が生じ、その間にピッチマークの修復などにより時間を割けるようになった。風が吹けば桶屋が儲かるではないが、旗差しパットが結果としてグリーンコンディションの向上につながるというわけ。これは新ルールの意外な恵みと言えそう。
ただ、問題もある。
「プレーヤーがピンを差したままプレーしようとしているのに、キャディさんが長年のクセでつい抜いちゃったりなんてケースもありました。またレディゴルフは、人によっては『常に急かされているようで落ち着かない』といった声も。それからクラブ競技などではドロップの仕方や、クラブレングスの測り方など、理解度もまちまちなので、まだまだトラブルが心配ですね」
また、今年から旗竿とカップにボールが挟まった状態でもカップインとみなされるようになったが、それを知らない同伴プレーヤーからクレームを受けたというケースもあったという。また、ピンを差したままだとボールをピックアップする際にホールを傷つけやすくなると心配する声も上がっている。
「ホールの縁の損傷は、新ルールでは直せるようになりました。そうした変更点も合わせて周知したいですね」(松下)
ルールの簡略化、プレーの迅速化を目的としたとされる今回のルール改正。その目的通りに、プレーヤーにとって快適なプレーを実現するためには結局のところ、プレーヤーやキャディさん、コース関係者といったすべての人々がルールに対する正しい知識を高めていく必要があるようだ。
撮影/大澤進二