カチャカチャの賢い運用法 最初の質問「あなたは見た目を気にしますか?」
弾道調節機能として、もはやドライバーの標準機能となっている“脱着・可変できるシャフトスリーブ”と“動かせるウェート”だが、一般には今ひとつ難解で、一回も使ったことがないというゴルファーも多いときく。
確かにスライスを軽減させようとカチャカチャを使ってみようと思ったとき、シャフトを「アップライト」「HIGHER」と書いてあるポジションに回してもできそうだし、ウェートを「DRAW」と書いてある方に動かしてもできそう。“結局、どっちでやればいいの?”と戸惑ってしまうことになる。
シャフトの可変とウェートの可変がダブルで搭載されたドライバーヘッドの最初は、おそらくテーラーメイドのR9ドライバー(09年)だ。米国本社に取材に赴いた際、開発者の説明を聞いている最中から、結局どういう使い方をすればいいのだろう? と考えてしまったことを思い出す。多くのことができることはありがたいが「自由に使ってみてください」では、結局使わない(使えない)んだよなぁと思ったのだ。そこで、次に開発者ではなく、フィールドでフィッティングを担当しているスペシャリストに聞いてみた。どういうふうにフィッティングでは使っているの? と聞いたのだ。
「では、私から質問しますよ。例えば、スライスを軽減するためにシャフトを回し、フェースが左に向くようにドローポジション(現・HIGHER)で再セットします。あなたはアドレスでフェースの向きが左に向いていても気になりませんか?」
私は気になる!アドレスでスクエアになるように握り直してしまう!と答えた。するとフィッティング担当者はこう言ったのだ。
「では、シャフトの向きはニュートラルのまま、ウェイトを動かすことでスライスを抑えていきましょう。ウェートを動かせば重心位置が変わってヘッドのターンがしやすくなります。でも、構えた時のフェースの向きは変わりません。これなら繊細なあなたでも安心でしょう?」
これを聞いた時、とてもシンプルでわかりやすいなぁと思った。彼はシャフトの挿入角度を変えてフェースの向きを調整しても、ゴルファーの中にはアドレスでモジモジしながら、結局は好きな見え方になるように無意識に握り直してしまうタイプがいることをよく知っていたのだ。この場合、フックフェースにするほどオープンに握り直す(構え直す)ことになり、逆にスライスする可能性を高めてしまうわけである。
もともと見え方を変えるための職人技だった
シャフトを一度取り外し、向きを変えて挿し直すとなぜフェースの向きやライ角度が変わるのかといえば、先端についているスリーブには、1.0度〜2.0度の角度がついているからである。簡単にいえば、先端がくの字になっているのだ(中にはこれにプラスしリングパーツがついていてさらに細かい調整ができるものもある)。こうなっていることで挿す向きを変え、シャフトを同じように構えればフェース角やライ角度が変わるわけである。
シャフトの挿入角度を変えるカスタマイズは、パーシモン(柿の木)ヘッドの時代から行われていることで、その目的は主に見た目(アドレスでのフェース向き)を調整するためのものだった。ちょっと被って見えるな、といわれたらシャフトを右から挿し直してスクエアに見えるようにしていた。もちろん、当時は接着剤で完全固定。元に戻すには再びネックを熱し接着剤をバカにしてシャフトを引っこ抜き、接着し直すというめんどうな作業が必要になったが、そもそも目的が見た目の調整である。“元に戻す”必要はまずなかったと思われる。
最新ドライバーは、ゴルファーがレンチを使って何度でも、自分の手でシャフトの挿し方を変えることができる。もちろん、元に戻すのも10秒足らずでできるだろう。これはまさに職人いらずの画期的システムだ。
弾道調整(調節)と聞けばハードルが高い感じがするかもしれないが、もともと見た目調節のために行われていたことなのだから、最新ドライバーでもそのために使えばいいと個人的には思う。シャフトの向きで見た目を合わせ、振りやすさやヘッドの返り具合は(必要があれば)ウェートでやってみる。おそらくそれが最もシンプルで的確なカチャカチャの使い方である。
これは少し乱暴な言い方になるが、構えにくいアングルに調整しないと思ったような方向に飛んでくれないクラブは、そもそも買わないほうがいい。最初から構えやすい見た目で、思った方向に飛んでくれるクラブが絶対他にあるのだから。