ゴルフは性別・年齢問わず楽しめるスポーツ。ゴルフマナー研究家・鈴木康之は対等に近いほどゲームはいい勝負になり、ゴルフはそうなるように工夫されているという。自身の著書「脱俗のゴルフ」からエピソードを紹介。

父親が幼子をずーっと前方に立たせ「ヨーイ、ドン」で駆けっこをする。私たちのゴルフもこれと同じように工夫されています。ハンディキャップを使うゲーム方法はゴルフの頭のいいところです。上手と下手が互譲の精神をよりどころに対等に立つ。ホモ・サピエンスでなければ考えつかない遊び方ではないでしょうか。

おっと、私はいま差別語にも似たイケナイ言葉を使ってしまった......。アマチュアゴルフの対等の理念に照らして言うと、技量上級の者を「上手」と崇めるのはいいけれど、 下級の者を「下手」と見下すのはいけません。

この上下の構図感覚ゆえに大方の人がハンディキャップの言葉遣いを間違えます。コンペのパーティでの「ハンディを上げろ」「下げろ」の騒ぎがそれです。ハンディキャップの数字を増やしてほしいときに下級扱い、すなわち「下げてくれ」と言う人が多いのですが、逆です。数字を増やすのはハンディキャップを上げる、ハイにする、です。

踏台だと思ったらいいでしょう。背丈のある人には低い台。私などは背が低いので踏台を高くしていただけると対等になります。 ゴルフにはもう一つハンディキャップのような調整機能があります。ティインググラウンド(注:刊行当時。2019年ルール改正後の現在はティイングエリア)の選択です。

画像: ハンディキャップなりのティイングエリアを選択しよう(写真は亀山修)

ハンディキャップなりのティイングエリアを選択しよう(写真は亀山修)

たいていは三、四段階のティがあります。優れたコースでプレーすると、セカンドショ ットのボールが仲良くほぼ同じエリアに寄ります。このときにお互いの中に生まれる一 体感にも似た気持ちはなかなか結構なものです。

成熟したコースでは、前のティからの球が後ろのティからの球より前に出ていることが多くなります。ティマークの置き方の妙です。セカンドショット地点にまで対等の理念が及ぶような配置こそティ設定の真面目。積年の平均値データを生かした技で、老舗の料理の隠し味と同、さすがはこのコースと感心させられます。

「あるがまま」はゴルフが唱えるお経のいちばんのお題目です。ハンディキャップの数字も使用するティマークの色も、あるがままの自己表現で、実力より少ない自己申告のハンディキャップや一段後ろのティで頑張るのも気合いとしては悪くありませんが、見栄っ張りになってしまってはいただけません。ほかの人と仲良くするためになどと言って、前のティからスプーンで打つのも、オシャレでキザで、なかなかなものです。

ベン・クレンショーやトム・カイトの師匠ハービー・ペニックは、オースティンCCのチャンピオンティに上ろうとするそこが不似合いなゴルファーには「そこはベンとカイトの専用ティだよ」と大声で呼び戻したそうです。著書の中で師いわく、「ゴルフコースは肩肘張らずに楽しむところだ。力ある一部の人たちのためにゴルフはあるのではない。万人のためのスポーツなのだ」と。

万人が見栄も掛け値もなし、あるがままのハンディキャップを持って、あるがままのティを用いるのが、身のため、人のため。なぜなら、対等に近いほどゲームはいい勝負になります。ゴルフはそうなるように工夫されています。

「脱俗のゴルフ 続・ゴルファーのスピリット」(ゴルフダイジェスト新書)より

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