若手女子プロの登竜門と言われる「グアム知事杯女子ゴルフトーナメント」でプレーオフの末優勝を挙げた野澤真央。今年は限られた試合数の中から“下克上”を目指す21歳のスウィングを、プロゴルファー・中村修が解説。

手元が体から遠い

2018年シーズン、「サマンサタバサ」で5位タイに入るなど爪痕は残したものの、賞金ランク61位でシード獲得には届かなかった野澤真央選手ですが、グアム知事杯で見事勝利を収めました。

彼女の2018年のスタッツを見てみると、平均飛距離は243.73ヤードで17位。「マンシングウェアレディース」の2日目の終了後に開催されるドライビング女王コンテストでは269.6ヤードを飛ばし、穴井詩に続く2位に入賞するほど、飛ばし屋です。

画像: 2018年「マンシングウェアレディース」のドライビング女王コンテストで穴井詩に続く2位になった野澤真央(写真 大澤進二)

2018年「マンシングウェアレディース」のドライビング女王コンテストで穴井詩に続く2位になった野澤真央(写真 大澤進二)

今回の勝利で波に乗り、限られた試合数となる今年の前半戦での活躍が期待される野澤選手。そのスウィングを見ていきましょう。

画像Aを見てください。「テークバックの写真かな」と思うと思いますが、右側の写真はなんとトップ・オブ・スウィング。かなりのコンパクトトップであることがわかります。

左側の写真を見ると、ハーウェイバックのポジションで右のひじが伸びているのがわかります。是非一度、シャドースウィングで構いませんので、このように右ひじを曲げずにバックスウィングしてみてください。腰回りから背中にかけてしっかりとねじられる感覚が感じられると思います(キツいので、怪我をしないようにご注意を)。

また、トップがコンパクトであっても手元は体から遠く、ダウンスウィングのエネルギーはしっかりと溜められています。同時に、腕の運動量が少なくなることでタイミングがずれる要素を減らすことにつながります。

画像: 画像2 右ひじをできるだけ曲げずにバックスウィングをすることで体から手元が遠くなりコンパクトでもエネルギーを蓄えたトップになる(写真は2018年ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ 写真/姉崎正)

画像2 右ひじをできるだけ曲げずにバックスウィングをすることで体から手元が遠くなりコンパクトでもエネルギーを蓄えたトップになる(写真は2018年ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ 写真/姉崎正)

もう一つの特徴は、肩の縦回転です。画像B、インパクト前後の連続写真を見てください。切り返し以降、ややルックアップしながら左の肩を上げるようにダウンスウィングし(写真左)、フォローでは右肩が下がり正面から見ると肩が縦回転しているように見えます。

フォローの画像では、右のわきが縮まった側屈の動き(サイドベンド)が入っています。このサイドベンドの動きが入ることで前傾角のキープにつながっています。

画像: 画像B 肩を縦に回転させる意識で前傾角をキープする(写真は2018年ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ 写真/姉崎正)

画像B 肩を縦に回転させる意識で前傾角をキープする(写真は2018年ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ 写真/姉崎正)

余談ですが、多くのアマチュアの方は、肩をタテではなく横、水平回転に回す意識を持っていると思います。しかし、そうするとダウンスウィングで腰と肩が同じタイミングで回転しやすく、飛距離の源になる上半身と下半身の捻転差が生じにくくなったり、右肩が前に出てカット軌道になったりとミスの原因になります。

「右肩が突っ込んでるよ!」とよく言われる方は、前傾角をしっかりとキープして、肩を横ではなくタテに動かす意識を持つと、その症状が改善される可能性があります。

飛距離という武器を持ち、風の強いグアムでボールをコントロールし優勝できたことは次につながることでしょう。まだまだ伸びしろのある21歳。野澤選手の今シーズンの活躍に期待します。

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