「ワイドなバックスウィング」という言葉を最近少しずつ耳にする機会が増えてきた。なんでも世界ランキングトップ選手の多くが、ワイドなバックスウィングをしているというのだが……プロゴルファー・中村修が最新のスウィングトレンドを解説した2019年2月19日公開の記事を再掲載!

ハーフウェイバックで右腕が曲がってない

ワイドなスウィングとはバックスウィングでコックの入るタイミングが遅く、テークバックを広く大きくとるスウィングのこと。左腕が地面と平行になるポジションで右腕がほぼ伸びた状態で、コックを入れず、クラブが立っていない選手は「ワイドなスウィングをしている」と言っていいと思います。

ロリー・マキロイやジョン・ラーム、ザンダー・シャウフェレ、ブライソン・デシャンボー、リッキー・ファウラーなどはその分類に当てはまり、ブルックス・ケプカもほぼその分類に入れていいと思います。

まずは画像Aのラーム(左)とシャウフェレ(右)のテークバックを見てください。両腕は伸ばされ手元は体から遠くにあり、手首を親指側に折るコックの動きはほとんど入っていません。彼らは、典型的なワイドに上げる選手と言えそうです。

画像: 画像A ワイドなバックスウィングをするJ・ラーム(左)とZ・シャウフェレ(右)(写真は2018年WGCブリヂストン招待 写真/姉崎正)

画像A ワイドなバックスウィングをするJ・ラーム(左)とZ・シャウフェレ(右)(写真は2018年WGCブリヂストン招待 写真/姉崎正)

それに対して地面と左腕が平行になるポジションでクラブが90度立つのはワイドに対して「ショート」なスウィングと言えます。コックを使うタイミングが早く(アーリーコック)、比較的アップライトな(縦振りに近い)スウィングに多いです。

たとえば画像Bを見るとわかるように、ジャスティン・ローズ(右)、フランチェスコ・モリナリ(左)などはこのタイプ。

画像: 画像B コックを早いタイミングで使うF・モリナリ(左)とJ・ローズ(右)(写真は2018年ブリヂストン招待(F・モリナリ)と2019年ファーマーズインシュランスオープン(J・ローズ)写真/姉崎正)

画像B コックを早いタイミングで使うF・モリナリ(左)とJ・ローズ(右)(写真は2018年ブリヂストン招待(F・モリナリ)と2019年ファーマーズインシュランスオープン(J・ローズ)写真/姉崎正)

往年の名選手でいえば、トム・ワトソンなどはショートなスウィングをする選手です。かつてドライバーの重心は今より高く、ボールを飛ばすにはある程度ダウンブローに打ってスピンをかける必要がありました。そのためには、アップライトなスウィングをする必要があり、アップライトなスウィングするためにはショートなバックスウィングが要求されたのでしょう。

画像: コックを早めに使うトム・ワトソン(写真は2013年のダンロップフェニックス 写真/姉崎正)

コックを早めに使うトム・ワトソン(写真は2013年のダンロップフェニックス 写真/姉崎正)

では、ワイドなバックスウィングのメリットはどのような点にあるのでしょうか。大きくふたつ挙げられます。ひとつは、体から手元を離すように上げることで体の捻転が深くなること。

画像Cはロリー・マキロイのバックスウィングを正面と後方から見たものですが、両腕はほぼ伸ばされてコックもほとんど入っていません。右ひざを動かさないままこのように腕とクラブを動かすと、腰回りから背中はしっかりとねじられ、エネルギーを溜めることができます。実際にやってみると、かなりきつく感じられるはずです。

画像C 右手がピンと伸びたマキロイのテークバック。右ひざをキープしてこれを行うと、かなりキツいのがわかるはず(写真は2018年のWGCブリヂストン招待 写真/姉崎正)

ふたつめは、ワイドなバックスウィングをとると比較的フラットなトップになりやすく、それによりクラブの入射角が浅くなり、以前に比べて低重心になった現代のクラブにマッチする点です(低重心ドライバーは重心の上で打ったほうがスピン量が減って飛ばしやすくなります)。マキロイやガルシアのトップは、手元が頭より高くならないフラットなトップになっています。

画像: 画像D ガルシア、マキロイのフラットなトップ。クラブの入射角は浅くなりやすい(写真は2018年WGCメキシコ選手権(左)と2018年WGCブリヂストン招待(右) 写真/姉崎正)

画像D ガルシア、マキロイのフラットなトップ。クラブの入射角は浅くなりやすい(写真は2018年WGCメキシコ選手権(左)と2018年WGCブリヂストン招待(右) 写真/姉崎正)

画像Eはマキロイのダウンからフォローにかけての連続写真ですが、フラットなトップからダウンスウィングするとインパクト、フォローとクラブが描く面(スウィングプレーン)が縦(アップライト)ではなく比較的斜めな軌道であることがわかります。非常に現代的なスウィングと言っていいでしょう。

画像: 画像E ワイドにバックスウィングするマキロイは、斜めの傾きの度合いの強いスウィング軌道を持つ(2018年WGCブリヂストン招待 写真/姉崎正)

画像E ワイドにバックスウィングするマキロイは、斜めの傾きの度合いの強いスウィング軌道を持つ(2018年WGCブリヂストン招待 写真/姉崎正)

もちろん、ジャスティン・ローズがワイドなバックスウィングをして“いない”ように、あくまでスウィングのタイプの違いであり、一概にどちらが正しい、間違っているという話ではありません。

ただ、現代の大型ヘッドを使いこなすためのテクニックのひとつであることは間違いがないので、興味のある方は練習場でワイドなバックスウィングを試してみるのもいいかもしれません。かなりキツいので、ストレッチはしっかりと行った上でやってみてください。

(2019年2月19日の記事を再掲載)

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