ゴルフルールはとかく煩雑で、わかりにくいと指摘される。子離れ後にゴルフをはじめたとある女性ゴルファーの目には、その運用は甚だ奇異に見えたようで……ゴルフマナー研究家の鈴木康之が自身の著書「脱俗のゴルフ」からルールにまつわるエピソードを紹介。

ゴルフルールはどうも変!?

神戸在住の旧知の奥さんの話です。「名前書いたらあかんよ」と約束させられましたから、GOLFの好きなG子さんとします。

二人の息子を高校に上げ、もう少しで手が離れるところまできました。大学進学は進路も学費も自分の責任で、という約束ができています。

震災後の罹災生活は親子四人を安穏から目覚めさせ、思いがけない家族の会話を経験させてくれました。そして互助の心と自立の力、毎日をだらーっと過ごさない生き方のだいじに気づきました。

息子たちはそれぞれに好きな道を見つけた様子。さて、母親仕事から開放されて自分はこれから何をするか。若いころ陸上選手だったG子さんはもう一度体を鍛えたいと思い、夫が永年飽きずに楽しんでいるゴルフとはどんなものかと、入門を決意しました。

ゴルフ教室と練習場に通い、素振りを毎日。その努力と素質のためでしょう、たちまち腕を上げました。しかしお誘いのかかるお遊びゴルフにはいまひとつ。夫の薦めで格安コースの会員になりました。競技会はもちろん、スコアカードを提出するゴルフに面白さを見出しました。

そこで痛感したのがルールとマナーの修得でした。マナーは本を読んで覚え、他の人に迷惑をかけないという原則で考えれば、為すべきことは大概わかってきました。

悩みはルールです。しばしば自球の正しい処理やマーカーとしてのジャッジに不安が募ります。真面目なG子さんはその都度、ルールブックと裁定集と首っ引きで調べますが、覚えきれません。「どうもへんや」。G子さんの悩みを、出張で上京した旦那が言づかってきたと私に訴えてきたわけです。

「どうもへんや」の一つは、「周りにいい加減なルールでやってる人が仰山おる。シングルさんでも曖昧だったり、違っていたり。そのわり勝ち負けには拘るし、救済は受けたがる。ルールに厳格でないと、ゲームにならんのと違うの」ゴルフのルールは煩雑過ぎないか、というのが「どうもへんや」のもう一つです。ゴルフ規則の裏表紙に「あるがままにプレーせよ。それができないときはフェアに処理せよ。フェアに処理するためにはルールを知る必要あり」と書いてあります。

画像: 2011年のゴルフ規則の裏表紙には「球はあるがままにプレーせよ コースはあるがままにプレーせよ それができないときは、最もフェアと思う処置をとる 最もフェアと思う処置をとるためには、ゴルフ規則を知る必要がある」と記載されている

2011年のゴルフ規則の裏表紙には「球はあるがままにプレーせよ コースはあるがままにプレーせよ それができないときは、最もフェアと思う処置をとる 最もフェアと思う処置をとるためには、ゴルフ規則を知る必要がある」と記載されている

「せやけどなんでワンパナとツーペナがあるの。クラブレングスのワンとツーもそうや。どっちもワンでええやないの。もっとシンプルに集約してほしい。ゴルフ規則の知的レベルの高さにはわたしら一般の頭はついて行かれんよ」と、まあ、こう訴えられて旦那も私もたじろぐばかりです。ごもっともです。ゴルフ規則はゴルファーを思うゆえに懇切丁寧、子細なのでしょうが、情けが仇、子細に過ぎて煩雑。あまねく大衆が楽しむゲームとあれば、G子さんの指摘は痛点を突いています。

誰の頭にも入るようにもっと簡素化し、この先はゴルファーが自分で考えて判断せよと突き放すほうが、本当はゴルファー思いなのでは、とそう考えさせられる、友人との一夕でありました。

ゴルフルールは、レス・イズ・モアとはいかないものでしょうか。

「脱俗のゴルフ 続・ゴルファーのスピリット」(ゴルフダイジェスト新書)より。

※編集部注:2019年1月1日より新しいゴルフルールが施行されています

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