日本で初めて開催されたUSGA(全米ゴルフ協会)主催の「ゴルフ・イノベーション・シンポジウム」。その初日、ゴルフ人口が世界的に減少し、より少ないコストでより高い満足度をゴルファーに与えることが世界的課題となっているなか、ある日本のゴルフ場の事例が紹介された。赤字を出してしまったゴルフ場の起死回生の策とは……?

赤字を契機に発電事業へと参入。クリーン電力でコースのイメージアップに

「イノベーションへの投資」をテーマに登壇したのは浜名湖カントリークラブの理事長・藤田正治氏。なんとこのゴルフ場、練習場の脇に巨大な風車が回り、駐車場の屋根には太陽光パネルを設置。現在は売電事業でも収益を挙げているのだという。

画像: 登壇する藤田氏。背後のモニタには浜名湖CCに屹立する巨大な風車が見える

登壇する藤田氏。背後のモニタには浜名湖CCに屹立する巨大な風車が見える

「2002年に経常損益が赤字となりました。黒字転換が経営の最重要課題になり、収支改善のために最初に経費を見直す中で、電気料金負担が2000万円と負担が大きいことがわかりました。現預金はあったのですが、低金利下で運用手段がなかったこともあり、投資額の26%が国からの補助金でまかなえ、静岡県も推進計画を実施し、かつコースのある湖西市白須賀地区が風力発電の好適地と評価され、さらには周辺に民家が少なく、地域の賛同も得られたことから、回収可能と判断し、風力発電事業をはじめました」(藤田氏)

太陽光発電設備、風力発電設備を合わせての総工費は3億3500万円。うち、9100万円を国からの補助金で賄い、2006年には売電事業をスタート。コース内で回り続ける巨大な風車の存在に、当初は「風が強いゴルフ場であることを表明するようなもの」として反対する声も挙がったという。

しかし、今やその風車がクリーンエネルギーのシンボルとなり、1250トンのCO2削減効果も見込めることからコースのイメージアップにも成功。冒頭に挙げたように世界的にゴルフ人口が減少傾向にあるなか、2004年に3万7453人だった来場者数を4万4786人まで増やすことにも成功したという。

画像: コースで使用する電力を賄いつつ、売電による利益も確保と、一石二鳥となっているという(画像は藤田氏のプレゼンテーションより)

コースで使用する電力を賄いつつ、売電による利益も確保と、一石二鳥となっているという(画像は藤田氏のプレゼンテーションより)

「当初の計画では売電収入2000万円を見込んでいましたが、2017年には2800万円(の売り上げ。うち利益が1100万円)。16年で投資回収のメドが立っている」と藤田氏。一方で、今後は風車等の部品の交換、安全対策、設備のメンテナンスなどが大きな課題になっているともいう。

浜名湖CCのイノベーションへの投資とは、コース内に巨大な風車塔を設置し、駐車場の屋根に太陽光パネルを設置するというもの。今後は、地域の防災拠点として大災害時の待避所としても機能するよう、非常時に対応できる設備の充実を図っていくという。地域のなかで、たしかな役割を持つ。ゴルフ場にはこんな“生き残り方”も存在するのだ。

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