優勝した翌日の新聞紙には「無名プロ」と書かれたり、テレビ中継では実況アナウンサーに「ケビン・ミッチェル」と名前を間違えられるなど知名度はこれまで低かったですが、「ホンダクラシック」に続き「アーノルド・パーマー招待」では6位に食い込み7月の全英オープン出場権を得ました。
日本円にすると2週間で1億7000万円を稼いだミッチェルが使うウェッジはタイトリストのボーケイウェッジ。しかし市販モデルとは全く異なる形状で「MARIANAS TRENCH(マリアナ海溝)」という刻印と深い凹み溝がソールの後ろ側に入っていました。
早速、ウェッジ職人のアーロン・ディル氏から話を聞いてみました。ディル氏はボブ・ボーケイ氏の右腕として頼りにされているツアーバンの職人でジョーダン・スピースやジャスティン・トーマス、アダム・スコットのウェッジの担当者です。
「キースのロブウェッジはロフト59.5度、ノーメッキのVグラインドというモデルにチャンネル(溝が入っている)プロトタイプです。ホンダクラシックの前週に『新しいウェッジに変えたいからこれまで使っているのと同じモデルを用意してくれませんか?』と連絡が来たので、早急に対応したんです。 試合が始まる前の火曜日に練習エリアで『もう少しソールの溝を深くしてくれないか?』というリクエストをもらい、ツアーバンで作業をしていたら突如深い溝=マリアナ海溝っていうアイデアが浮かび刻印を打ちたくなったんです(笑)」(ディル)
「まさか優勝するとは予想していませんでした」とディル氏は言います。
このウェッジ(Vグラインドに凹み入り)はツアーでも人気だということです。
「 バウンスの部分が前方にあるので鋭角に打ち込んでいくタイプの選手は深くターフを取りすぎないという利点があり、後ろの部分はフェースを開いてときにバウンス角が減り、多彩なショットに対応できるマルチな機能があります」(ディル)
イアン・ポールターにはスポーツカーの刻印、ビーフというニックネームのアンドリュー・ジョンソトンにはステーキ肉の種類名の刻印を押すなどいたずら好きのディル氏のユニークな刻印は幸運をもたらすという評判です。
ちなみにクラブはミズノと契約をしています(ウエッジは契約外使用OK)。MP-18のアイアンセットに加えてドライバーもミズノの北米モデル「ST190」を昨年秋から使っています。今シーズンの成長株として注目です。