「Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント」で2季ぶりの優勝を挙げた上田桃子。難易度の高いコースで勝利をつかんだ要因のひとつに、抜群の切れ味を見せたアイアンショットがある。実力者が見せたたしかな技術を、プロゴルファー・中村修が解説。

上体で打たずに下半身で打つ

「Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント」開催コースの茨木国際GCは大阪平野を見下ろす高台にあり、アップダウンのある丘陵コース。練習日に私もチェックしましたが、打ち上げ・打ち下ろしが多く風の影響を受けるティショットに加え、アンジュレーションのきつい砲台グリーンを狙うセカンド以降と、気の抜けないホールが続きます。

さらに、グリーンを外すと芝の生え揃っていないグリーン周りが難易度を増します。練習ラウンドではユーティリティやパターでアプローチをする選手の姿を目にしました。勝つためには勢いだけでなく技術が求められる。そんな試合だったと思います。

画像: Tポイント×ENEOSゴルフトーナメントでツアー通算14勝目を挙げた上田桃子(撮影/姉崎正)

Tポイント×ENEOSゴルフトーナメントでツアー通算14勝目を挙げた上田桃子(撮影/姉崎正)

上田選手のこの試合のスタッツを見ると、フェアウェイキープ率が6位、パーオン率は2位と抜群の安定感を示しました。とくに勝負所の16番パー4では残り75ヤードから打ち上げで右サイドに切られたピンにピタッとつける見事なショットを放ちバーディで優勝を手繰り寄せました。

最終日前夜、就寝中に謎の右手中指の激痛に襲われたと言いますが、優勝会見での「普段から、下半身で打つことを心がけていたから、右手がダメでもやれるのではないかと思った」という言葉の通り、安定感抜群の下半身主導のスウィングが、勝利の要因と言えます。

開幕戦、ダイキンオーキッドレディスで撮影した連続写真で、そのアイアンスウィングを見てみましょう。

画像: 写真A:バックスウィングの始動からしっかりと下半身が動いている

写真A:バックスウィングの始動からしっかりと下半身が動いている

写真AとBを見てください。写真Aはアドレスとそこからの始動の写真。写真Bはトップと切り返しの写真です。それぞれ、下半身から動き出していることがわかるかと思います。

画像: 写真B:手のポジションはトップの位置(左)と切り返し後(右)でほぼ同じだが、下半身はしっかりと動いているのがわかる

写真B:手のポジションはトップの位置(左)と切り返し後(右)でほぼ同じだが、下半身はしっかりと動いているのがわかる

上田選手のスウィングに関して、コーチを務める辻村明志プロコーチに先週の練習日に話を聞いた際、こんなことを教えてくれました。

「下半身の動きを使わない手はないが、大きく使えばいいというものではありません。小さい動きでしっかりと使うことが大事。下半身の動きでクラブを振れるようになると振り切れるし飛ばせます」(辻村)

始動や切り返しといったスウィングの要所で効果的に下半身を使う。そのことが、キレのいいアイアンショットを生んでいるようです。

そして、写真Cのインパクトではおへそでターゲットにボールを押しこむようにしっかりと腰がターンしています。腰のラインと肩のラインに注目すると、しっかりと上と下の回転差が見えます。下半身の動きで打っていることがここでも見てとれます。

画像: 写真C:下半身主導で、ボールを押し込むようなインパクト。その切れ味は抜群だ

写真C:下半身主導で、ボールを押し込むようなインパクト。その切れ味は抜群だ

他に注目すべき点としては、インパクトで右ひざが前に出たり、かかとが上がりすぎたりしていないことがあります。これは、腰の位置がボール方向に近づいていないことを表します。体の右側が縮まり、前傾角がキープされていることで手元は低い位置から入り正確なボールコンタクトを実現しています。

お手本のような上田選手の下半身主導スウィングのエッセンスをアマチュアのみなさんが取り入れたいと思うなら、スローモーションの素振りをしてみるといいと思います。下半身が動き、それに連動して上半身が動く。その感覚をよりつかみやすいはずです。

女子ツアーは3戦目を終えて比嘉真美子、鈴木愛、上田桃子と実力者の3名が相次いで勝利。それぞれ長いシーズンの中で複数回優勝しそうなプレーぶりです。次に勝つのは誰か、今週も楽しみでなりません。

撮影/姉崎正

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